とっても面倒です。








綺麗に笑うけど、どこか嘘っぽい。
冷静装ってるけど、わりとすぐキレる。
優男に見えるけど、口よりすぐ手がでる乱暴者。しかもけっこー強い。

頭よさそうに見えるけど、多分トータル的にはオレのほうが頭いい。


あとは…
アツシアツシって近付いてくるくせにオレが「室ちん」って一歩踏み込むと、スルッと逃げていく。

自分からキスしてくるくせに、オレからしようとすると真っ赤な顔して拒む。

同じように自分から誘ってきたくせに、じゃあ遠慮なくいただきまーすって耳たぶ舐めたとたんに「やっぱナシ!」ってストップかける。これまた真っ赤な顔で。


だから結局なにが言いたいかっていうとー、室ちんはほんと『めんどくさい』のだ。








「室ちん、」
「んー?」
「ちゅーしていい?」
「…今漫画読んでるだろ。あとでな。」
「むー…」







ベッドにもたれて座るオレの脚の間にいる室ちん。オレにもたれて漫画を読んでいるその肩に顎をのせて読み終わるのを待つ。
この態勢はもはや定位置。

室ちんのサラサラした黒い髪とその間に覗く耳にスンと鼻を擦り付けた。




「アツシ、くすぐったい。」
「…耳?首?」
「どっちも。肩も重い。」
「むー………」
「むーじゃない。」





なんか腑に落ちないんですけどー。
ここオレの部屋だし、室ちん読んでるのオレの漫画だし、しかもこの態勢で何もさせてくれないとか…



(ーーー…あ、)



冷静に注意してくる室ちんにちょっとムッとしてしまったけれど、それも一瞬だった。

だって、耳赤くなってんじゃん。
首も赤い。

それいつから??
ちゅーしていいって聞いたとき?
さっき密着したとき?
淡々とした言葉とは真逆じゃん、なんでこんな可愛いことになってんの?





「室ちん、こっち向いて。」
「…だからまだ漫画読んでーー、あっ、」
「もうそれいいから。こっち向いて。」




バッと奪い取った読みかけの漫画をぽいっと後ろのベッドに放り投げると「アツシ!」と怒鳴らりながらやーっと振り返った室ちんの両手首をしっかり掴んで、じーと見つめる。というか見下ろした。





「…んー…ちょっと顔あかくない?」
「赤くない!」
「ちゅーしていい?」
「よくない!」
「やだし。口あけて室ちん。」
「…っ、し、しないって…!」
「だめ。する。」








しないって言ってるくせにじゃあ何でそんな表情すんの?

困ったように眉下げて、真っ赤になった顔で、オレから逃げるように視線を外す。
イヤそうには見えないよ。
そんなふうにされると、余計に追いかけたくなる。


ほんとはしたいんでしょ?
ねぇ室ちん、素直になりなよ?



「あ、アツシ…待て…!」
「逃げんなしー。」
「っ…ん、っ…んン…」
「…、は…室ちん、唇開けて。」
「……、…ぁ、ん、ふ、んン…」




ほら、イヤじゃないんじゃん。
ちゃんと言うとおりにしてくれてるし、舌絡めたら気持ちよさそーな顔してるじゃん。
ああほんと室ちんはめんどくさい。


でも、そのめんどくさい室ちんにこんなにも夢中になってしまっているオレが

実は1番、
めんどくさいのかもしんないや。







〜END〜









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