言い訳を聞いてください
『悔しいな…やはり、負けるというのは』
その言葉を聞いて
オレはまた泣いてしまった
いつものようにふざけてやり過ごすことも出来ずに、ただ、涙だけが零れた
勝ちたかった
それ以上に、勝たせてやりたかった
真ちゃんに
オレの、相棒に
『勝ち』をプレゼントしてやりたかったんだ
真ちゃんは変人だと思う。
占い信じすぎだし、リヤカー引かせるし、なによりあの語尾もどうなのだよってツッコミたくなる。(ん?移った?)
加えて融通きかないし頑固だし我が儘だし、頭いいのか悪いのかどっちなのだよ(あ、移ってるわコレ。)って真剣に思う。
でも、あんなに才能があって…人間離れしてるくせに、人一倍練習もする。
その姿が好きだった。
だから真ちゃんに追いつきたかった。
はじめは対抗心。
次は認めてもらうため。
そのあとはただ、真ちゃんのためにオレが出来ることを必死でやろうとしてただけ。
足手まといになんかなるつもりは毛頭ねーし、役に立ってナンボだろ?オレがこのチームの司令塔なんだから。
真ちゃんの相棒って名乗るくらいなら、どんなことでも乗り越えていかねーと、到底務まんねーわけでさ。
「高尾?」
「っ…、ひ、っ…」
甘かったのかな。
吐くくらいの練習を何日も何日も続けて、朝も夜も、オレなりに頑張ってきたつもりだったけど
まだ、甘かったのかな。
「……珍しいな、お前がそんなにも泣くのは。」
「…っ、ゴメン…真ちゃん、」
「…何を謝っているのだよ。」
ごめん
自分一人でバスケするのが普通だった真ちゃんが、少しずつ皆を頼って、皆に協力して、いつの間にかチームは一つになっていって
真ちゃんはよく笑うようになったよね。
それを見るとオレまで嬉しくなったんだよ。
…ごめんね、真ちゃん
勝たせてやりたかった
勝たせてやれなかった
オレがもっと…もっと…、
「っ…、真ちゃん、ごめ、」
「高尾。」
「ごめっ…、」
「…。」
真ちゃんは何も言わなかった。
だけど、オレの頭にポンと触れた大きな手の平が温かくて、すごく優しくて、もう謝らなくてもいいって言ってくれてるみたいだった。
あの時止められたパスを
今度は絶対に真ちゃんに届けたい
約束したから
真ちゃんが思わずうなるようなパスをだしてやるからって
だから泣いてなんかいられないのに、まだ涙が止まらない。
それは、真ちゃんの優しい手が、オレの頭から離れていかないせいなんだからって
あとから言い訳、たっぷり聞いてもらわねぇとなーーー…
〜END〜
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