新年記念小説 2015







今年最後の部活、劉ちんはヤケにイキイキしてた。
多分部活後は福ちんのとこに直行パターンだったんだろう。

普段はうさん臭くて何考えてんのか解りにくい劉ちんだけど、福ちんに関わることだったら超がつくほど解りやすいのは相変わらずだと思う。

まぁ……好きなヒトになかなか会えないって大変そうだから解りやすさに磨きがかかっても仕方ないのかもねー。

福ちん今頃劉ちんと仲良くやってんのかな。
福ちんがいないとなると、アゴは一人ぼっちの年越しなのかな。

去年は部活後みんなで鍋パしたけど。
あー……そういえば確かその日の夜、いきなり部屋を訪ねてきた室ちんと初詣行くハメになったんだっけ―――――…


って…アレ???
もしかして、もしかしなくても今年もそのパターンだったりするんじゃ……



去年の大晦日のことをそこまで思い出したオレは、何やら妙な予感がしてベッドからむくりと身体を起こし、時計を見た。

時刻は23時50分。
……うん、妙な予感っつーか、めんどくさい予感がヒシヒシする。

と、まさにそんなタイミングでコンコンとノックされるドア。
恨めしい気持ちで見つめながら、のそりとドアに近付いて深夜の来客を招き入れた。




「アツシ、A HAPPY NEW YEAR!」
「………うん。」




もはや何もツッコむまい。
やたら流麗な英語の発音も、まだ新年あけまして〜じゃないことも(だいたいフライング気味なんだよね…)、深夜徘徊は御法度なことも、……去年と寸分違わずなこの状況も。

無言でジトーっと見下ろしていると、室ちんは無駄にいい笑顔で例の台詞を口にした。



「初詣行かないか??」
「……。(やっぱり…)」
「アツシ?」
「…ん、用意すっからちょっと待ってて。」



去年とこうも同じだと「行かないし」なんてことは言えるわけない。
予想が的中しまくりで心ん中で「はぁあぁ〜」とかなり大きな溜め息を吐きつつ、室ちんの頭をくしゃりと一撫でして壁にかけてあった上着を取りにいった。
















神社に向かう途中で鐘の音が聞こえてきた。
去年はこの鐘の音を、確か……ちゅーしながら聞いてたような……

ふと思い出し、隣の室ちんにチラリと視線を送ってみると、ばちっと目が合ってしまった。
いつからだろう、室ちんもオレのこと見てたみたい。
しかも目が合った瞬間、慌てて視線反らしちゃったし……なんか顔赤くない?



「なぁーに?」
「…別に。」
「見てたじゃん。」
「ア、アツシこそ…」



あらら〜……
唇尖らせてちょっと拗ねた顔してる〜
(可愛いんですけどー!)



「……オレはね〜、一年あっという間って感じだなーって思ってた。」
「意外と年寄りくさいこと言うんだな…アツシって。」
「うっせーし。」
「ふふっ、悪い悪い、」




クスクスと楽しそうに笑う室ちんを見ながら今度はオレがむうっと唇を尖らせる。

だってそうじゃん?
もう一年終わりだよ?
あっという間じゃん??

去年の今日、いっしょに鐘の音聞きながらキスして「今年もよろしく」って言ってからもう一年経ったんだよ。



「…ねー室ちん。」
「ん?」
「一年前も言ったけどさ、……今年もよろしくね〜」
「ああっ!!!」
「ん?」
「…………今年こそ俺が先に言おうと思ってたのに…」




そう言ってガクリと肩を落とした室ちんの何だかものすごーく悔しそうな顔が可笑しくて。
にやーって笑ったオレの背中に、バシンッと平手攻撃がお見舞いされてしまった。

だけど、そのあとちゃんと室ちんも「オレのほうこそ、よろしくな」と少〜しだけ頬っぺた赤くしながら言ってくれて、
そんな室ちんを見ながら思った。


……本当はさ。
やっぱり初詣とかめんどくさいって思うし
人混みなんて超キライ。

だけどね。
室ちんといっしょなら今年も我慢してもいいか、って。
そう思えるんだよ。




「室ちん、」
「何?」
「……呼んだだけー」
「何だよそれ?」
「あ、オレなんか甘いもん食べたい〜」
「…2つまでなら奢ってやる。」
「マジ?やったー」





……あのね、室ちん。

オレ、わかるよ。
きっとまた、一年なんて、あっという間だって。


室ちんがオレの隣にいて

そんなふうに
オレに笑いかけてくれるなら、ね―――。








〜END〜





*********



2014年に書いた新年記念小説と絡めてみました。
(ちなみに現在の拍手小説とも絡んでたり/笑)

リアルに一年経ったんだな〜って感じです。

お互いに「まったくも〜室ちんは…」「全く…アツシは…」って思いつつも、二人一緒にいることが当たり前な紫氷がずっと大好きです(*^v^*)


2015年もよろしくお願いいたします…!

2015/1/1
キサラギハルカ




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