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「赤司…相変わらず忙しいそうだね。」
「……光樹。」
「へへっ…久しぶり、あれっ前髪伸びた?伸ばしてる?」
降旗の小さな指摘に赤司は思わず指先で前髪に触れていた。
自分の僅かな、取るに足らない変化でさえも見逃さず、気付いてくれる目の前の存在。
降旗の笑顔だけで胸が温かくなっていく。
誰かを愛おしいと思える感情が確かに自分にもあるのだと、気付かせてくれる。
やはり、思わずにはいられない。
『とても愛おしい』と。
「恥ずかしながら迷っちゃって…赤司のホテル広すぎない?」
「光樹。」
「赤司?」
「会いたかったよ。ずっと。」
綺麗な瞳が真っ直ぐに降旗を捉える。
会話の流れなど関係なく、簡潔に告げられた好意の言葉に降旗の身体はピシッと固まってしまった。
そして、じわじわじわと何だか熱くなっていく。
「あ、相変わらず……ストレート、だな…」
「君も相変わらず、すぐに赤くなるんだね?」
「…仕方ないだろ、赤司…かっこいいんだから…」
「君にそう言って貰えるだけでこの顔に産まれて良かったと思えるよ、光樹。」
ふふふ、と余裕を含みながらも楽しそうに笑う赤司の顔に降旗が悔しそうに唇を尖らせる。
目を合わせれば互いに思うことは同じ。
「赤司には」
「光樹には」
「「かなわないな」」
その何だか微笑ましい様子を柱の影からコッソリ見ていた二つの存在。
背中越しにも気付いていた赤司は気付かないフリをし、気付きもしない降旗は相変わらずの笑顔を浮かべ、二人は肩を並べて歩き始めた。
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