2 〜ホテル内〜
………やばい。
完全に迷ったっぽい。
ど、どうしよう、と青ざめながら窓から見える壮大な景色にふと目をやる降旗。
昼食後にちょっとトイレ、と言い残し黒子や伊月たちと離れてからすでに1時間は経っているだろうか。
非日常的な景色につられ、フラフラと歩き回ったのがいけなかった。
「うう…室内で迷子って……オレってなんでこう…」
情けないんだろう、と涙が出てきそうなレベルだ。
だが、その情けない現状によって起こる偶然もある。
ウロウロとさ迷った結果、いま己の目の前、数メートル先に、1番会いたいと思っていた人物がいるではないか。
一瞬間違いかなと己を疑ったが、あんなにも綺麗な、あんなにもオーラを撒き散らす人間は他にいないだろう。
「あ、赤司…っ!」
叫ばずにはいられなかった。
会いたくて、ずっと話をしたかった。
その上、今のこの迷子という状況からも救われるとなれば。
タッ、と駆け寄ると、赤司の隣にいた実渕が「あら」と一言、クスッと笑って赤司の肩に手を置いた。
「じゃあ征ちゃん、私行くわね?」
「すまないね玲央。30分程したら――」
「あらやだ、明日でいいわよ。小太郎も千尋ちゃんも栄吉も好き勝手やってるんだから、征ちゃんも好きになさいな。」
そう言いながら数冊のファイルを胸に抱えて降旗の横を通り過ぎる。
「お久しぶり、降旗クン。征ちゃんを宜しくね?」とウインクしてみせると降旗の頬が少し赤く染まった。
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