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テレビでも雑誌でも『恐すぎる』と取り上げられたからどんなものかと思いきや……

まず5メートル先に飛び出し待ちの化け物1体。
さらにその数メートル先にも物が動く仕掛けのようなものが2……いや、3ヶ所か。

……どうしてくれよう。
案の定、全く怖くないんだが。

ちなみに今ちょうど5メートル付近だが……飛び出し待ちの化け物にチラリと視線を寄越しただけで何故かそいつは固まってしまった。
脅かし要員じゃなかったのか??

見た目こそ廃病院風でまぁまぁ凝っているとは思うが……さすがにこの程度だと……

光樹も怖くないんじゃないか?、そう思ってチラリと様子を窺ってみる。



「ううっ……な、なんか、不気味…まだ一回もお化け出てこないけど…」
「……。(さっき一体いたけどね。)」



そういえば、入ってからは手ではなくずっと腕を掴まれているな。
僕の後ろに隠れながら、震える手でしっかりと。
……なんだ、光樹はこういうのでも怖いのか。


「……可愛いな。」
「えっ?なに?」
「いや、何でもな――」
言い終わる前だった。
例の、物が動く仕掛けが作動したようだ。
ちょうど僕と光樹が薄暗い登り階段に差し掛かったとき、前ではなく後ろから、

ガタン!!!と大きな音を立てて(わざとらしく設置された)物置の扉がいきなり開いた。

(予想通り)物置の中には化け物要員。
ぬらぁっと関節の外れたような奇妙な動きで出てきて背後から襲い掛かってくるソレ。

……これに怖がれというのか?

どこか冷めた目でそれを見ていた僕だったが、光樹は違った。



「ぎゃあぁあぁぁあああ!!!!!!!!!!!!!」
「あっ、光樹…」




ぶるぶるぶるっと肩を戦慄かせながら絶叫したかと思いきや、結構なスピードで一気に階段を駆け登っていってしまったのだ。
(光樹は意外と足が速い。)

ただ、階段を登りきった先にもおそらくは配置されている化け物要員。
このままでは更に光樹を怯えさせてしまう。
だからすぐに後を追いかけた。


「光樹、あまり一人で行くと危ない――」
「うわぁああっっ!!!」
「光樹、落ち着い――」
「ひぃいいっ!!!!」



これは駄目だ。
怖いものから逃げるその先に更に怖いもの。その繰り返し。
その度に響く光樹の叫び声。

光樹の後ろから「落ち着け」と声をかけてみるものの、その僕の声を掻き消すのも光樹の叫びだ。

ラチがあかないな……
どうしようか…



暫し思考を廻らせていると、ヒタ……ヒタ……と向こうから何かが近付いてくる音。
それは僕より数メートル前で震えている光樹の近くまで寄っているが、薄暗い為か光樹はまだ気付いていない。

不気味な長い黒髪、ボロボロの布を纏ったような衣服は血にまみれている。
それが、光樹の手前1メートルで止まった。

僕にとっては滑稽な姿にしか思えないが……光樹にとっては。
おそらく、駄目だろうな……。


そう思ってすぐに光樹の腕に手を伸ばした。
こちらに引き寄せようとしたのと、カッッと化け物が姿を現したのは同時だった。



「ほわぎゃああぁあああぁーーーーーーーッッッ#▲¥§◇∴£◎■???!!!!!!!!!!!!!!」

「痛っ……、」




………何て事だ。
光樹に、押し倒されてしまった。
というか、いきなりガバッと正面から飛びついてきたのを受け止め切れずに体勢を崩してしまったみたいだ。

こういう時……敦や大輝みたいな体格であったら…しっかり受け止めてやれたのだろうか。
(…情けないな。)



「……、光樹、怪我はない?」
「あ、えっ…、」
「君に押し倒されるとはね。」
「…っ、うわ、ごめんっ……!!!!!」



声をかけると現状を把握した光樹は慌てて僕の身体から離れようとしたけど、その腕を捉えて、ぎゅっと抱きしめてやった。
また、僕より先を行くのは色々良くないからね。



「……あ、赤司…っ?」
「いいからもう僕から離れるな。…危なっかしくて心配になる。」
「す、すいません…、」



そう言ってシュンとしながら謝る姿はまるで子どものよう。
そんな様子にも「可愛いな」と思ってしまった。

確かに僕は敦や大輝、真太郎や涼太のような大きな肢体は持ち合わていない。
でも、光樹の身体をこうするくらいの力はあるんだよ。

こうやって、君を抱き込むくらいは簡単にね。



「…えっ、ええっ…?!!!(お、お姫様…抱っ…!!!!)」
「これなら問題ないだろう?怖ければ目を綴じていればいい。」
「で、でもっ…、(これはっ……恥ずかしいよ〜〜っ…)」



わたわたと腕の中で暴れる光樹を無視して先を進む。
ゴールを目指す途中で数回の仕掛けや化け物が飛び出すと、光樹が「ひっ」と小さく怯えた。



「ふふっ…本当に君は僕の予想以上に怖がりなようだね?」
「…う、…ほんと…すみません……」
「もうすぐゴールだよ。もう少しの我慢だから。」
「…う、うん。(…あれ?)」
「どうかしたか?」
「あっ…いや、別に…(……もう…あんまり、怖くないや…)」



その時、光樹の顔が赤く染まっていたことに僕は気付けなかった。
悔しいことに、終盤になるにつれ暗さが増したせいだ。

だからその可愛い変化に気付けたのはゴール後、ようやく太陽の下にたどり着いた時だった―――












(うわ、赤司ってばなにやってんの?? 超男前じゃんっ!!!)
(………降旗…お前…それは一体…)

(…………聞かないでください……あ、赤司、もう降ろして……)






〜END〜




*********


※小太郎は多分ちゃんと空気が読める、ので、さりげなく赤司を待っていたと思います。

そしてこのあと赤司にすすめられて宮地さんと入ればいい。

というわけで次は葉宮編です。


2014/9/6
キサラギハルカ


11/29再UP



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