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この薬の効果は約1時間。
服用した対象人物はその間深い眠りにつくものの、神経は逆に研ぎ澄まされるというものだ。

つまり、服用中のその時間は身体は眠っているため無防備な状態だが、感覚は敏感になっているため『気持ちイイ』ことをされると『気持ちイイ』と素直に認識することになる。




「……うーんと…つまり、どーゆーこと?」
「簡単に言えば、どれだけエロいことをしても起きない……だけどめちゃくちゃ反応はするってことアル。まぁ"夢の中でセックスしてる"って感じか?」
「……え…、なんか…それ、めっちゃエロいね。」
「高かったアル。」




ごく、と咽を鳴らす紫原に劉はフフンと腕を組み踏ん反り返った。

だがしかし。
紫原敦という男はその子供っぽい言動や行動とは想像も及ばないほどに『良識的』な人物であった。
そう、意外な程に。




「…ん〜……興味はあるんだけど…結局それって無理矢理ってことだよね?」
「無理矢理っていうか…知らない間に、的な??」
「………だからそれ、合意ナシなワケじゃん?…うーん…やっぱ俺、パス。」
「興味あるのにか?」
「…めっちゃあるけど、……室ちんの合意ナシでそーゆーのしたくねーから。」




この紫原らしからぬ言葉にはさすがの劉も少し驚いたものだ。
子どもだガキだ208cmのわがまま巨人だとばかり思っていたが、意外とそうでもないらしい。
道理であの外面だけは良い問題児中の問題児、氷室辰也と付き合えるだけはある。

当初は氷室が紫原に合わせていると思っていたが、これはおそらく逆っぽいな…と心の中で思い直した。



「…で〜?劉ちんソレ使うの?」
「ん?」
「福ちんに、使うの?」
「……うーん…」



一応少し考えるフリはするものの、劉の気持ちなどとうの昔に決まりきっていた。
『使う気がねーなら買わないアル』、と心の中で呟きつつ、目の前で返事を待つ紫原にニコリと微笑んだ。




「…私も無理矢理するのは嫌アルな。」
「でしょ〜?」
「この薬はとりあえずしまっておくアルよ。」
「うん、そーした方がいいよ。……つーか何のハナシしてたんだっけ〜?」
「……何だったアルかな〜?」




そうして互いにテーブルの上のポテトチップスに手を伸ばしつつ、今度は1週間後の他校との練習試合の話題にと移行していくのであった。

……ただ、この時この瞬間から劉の頭の中は別の事でいっぱいだったのだが、ツラツラと口から出るのは「練習試合」についてであった為、紫原がその心中に気付くことはなかった。



紫原敦は意外な程の良識人。
そして、劉偉とは。

……意外でもなんでもなく、
安定の、非常識人間であった。
特に、福井健介絡みの事項に限っては。

それはもう、
どうしようもなくである。





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