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コーヒー煎れてやるフリして薬入れるのは簡単だった。

アツシは『合意ナシでしたくねーし』なんて意外にも真面目な事を言っていたけど、……私は違う。
ぶっちゃけ楽しみ……というか、ずっと使ってみたくて仕方なかったアル。

だから、今日福井と会うことが決まってからはそれはそれはワクワクしてた。
やっと使う機会が来たと思った。


約3週間ぶりだろうか、久しぶりに会った福井は相変わらず小さくて、愛おしくて。
会った瞬間、というか視界に入った瞬間、抱きしめたくて堪らなくなってしまった。

……まぁ抱きしめたら『くるしいっつーの!!!会った早々オレを殺す気かお前は!!!』なーんて、甘い雰囲気とは程遠い台詞を叫ばれてしまったアルが。

それでも二人でテレビ見たり、バスケの話したりして過ごしてたら、ふと目が合う瞬間があって。
自然に唇を重ねる甘い時間があって。




『……ん、っ…』
『――…』
『りゅ、劉…、ン…んっ…!!』
『…、(唇柔らかいアルなぁ…)』
『はっ…ぁっ、…もう…、お前、しつけーよ…』




何度か繰り返したキスのあと、そんなことを言いながらバツが悪そうに顔を逸らす福井が可愛くて(だって顔どころか耳まで真っ赤にしてるから)、「あ、イケる」と直感した。

このまま押し倒して、キスを続ければそのままセックスになだれ込める、って思った。

だけど今日は、今日こそは。
普通にセックスするのも勿論いいけど、それは別に後にでもできる(っていうか後で絶対ヤる。)……つまり、今日こそがこの薬の出番なのだ。

今すぐ押し倒してアンアン喘がせてやりたいという気持ちをグッと押さえ込んで、その場を何とか堪えた自分を褒めたい。




『ふふっ…、福井、顔赤いアルよ。』
『し、仕方ねーだろ……会うのも…キスすんのも、久しぶりなんだからよ…』
『アイヤー、可愛いコト言うようになったアルな〜(マジ押し倒してーアル…)』
『うるせー馬鹿…!!』
『ははは、嘘嘘。お詫びにコーヒー煎れてやるアルよ〜』





我ながら流れるような展開だったように思う。

―――…そうして、差し出したSMK入りの特製コーヒーを、福井は一切の疑いもなく「さんきゅ!」とクソ可愛い笑顔で受け取って、ゴクゴクと飲み干したのだ。

罪悪感的なものが全く無かった訳ではないけど、ココロはチクリと痛むどころか、超ワクワクしていたのが摩訶不思議なところアル。
私は決して非人道的な人間ではナイのに。




『……美味しいアルか?』
『ん…、…おう。』
『?どうかしたアルか?』
『いや、…何つーか…』




じっ、と上目遣いで見つめてくる瞳が可愛い。
(何だその小悪魔的な角度は。キス待ち顔と受け取っていいアルか。)

そんな可愛い面のあと、悔しそうに唇を尖らせながら『……なんか…悪くねーな、こういうの…。』って、照れ臭そうに言う姿も、その言葉そのものも可愛かった。


……つまり、本来は(アツシや氷室なんかよりもよっぽど)良識的な私が福井に関しては何故かそれが崩壊してしまうのは―――…

うん、多分、福井が可愛すぎるのがいけないのだと思う。


薬の効果は即効性。
可愛い台詞を言ったあとすぐ、ばたんっと床に倒れ伏した福井をじーっと見下ろしながら、わりと真剣にそう思った。






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