紫原敦・誕生日記念小説
室ちんはあんな顔してるけど
あんな綺麗な顔してるけど
やること成すこと男前だと思う
『アツシ、誕生日プレゼント何が欲しい??』
……まぁいいんだけどね…
サプライズとかそういうの、室ちんには求めてねーし(つーか求めても絶対無理でしょ、あのヒトには)
でも友達ならまだしも、付き合ってんだからさ。
面と向かって言われるのは想像してなかったっていうかね……
『――は?』
『だから誕生日プレゼントだよ、もうすぐ誕生日だろ?』
『……、…あーそうだねー…(普通それ直接聞くかな…)』
『?どうした?』
ん???としたキョトン顔で見上げてくるのは可愛かったけど、ムラムラする以上にその時のオレの脱力感はけっこう凄かった。
あとオレって物欲っての?
あんまりナイんだよね。
食欲っていうかお菓子欲はあるんだけど。
でもお菓子は……別にプレゼントされなくても、毎日なんか貰ってるし。
だからいきなり聞かれても、すぐ答えらんないっていうかね。
『んー…別に特にない。』
『えっ……、それは…困ったな…何か言ってくれないと…』
なんて、本当に困ったような顔をするもんだから。
なんだか…からかいたくなっちゃったんだけど。
『あ、じゃあさ〜人間ケーキとかどうかな?オレ一回食べてみたかったしー。』
『うん??人間ケーキ???何だそれは?』
『あれっ、知らない?つまりー室ちんの身体にね、生クリームいっぱいつけて〜、それを食べんの。』
OK??と付け加えて今度はオレが室ちんを覗き込むようにして見つめたら、その3秒後くらいにいきなり爆発した。
室ちんの顔面が、だ。
『What?!!!!!!』
『…。(うわぁ、顔赤〜…)』
『ほっ…ほ、ほんとにそんなのがいいのか…??!!けっこう変態だな、アツシ…!!』
『嫌なら別にいーけど。あとサラッと変態とか失礼発言しないでくれる?』
別に本気じゃねーし。
断じて変態じゃねーし。
室ちんのそーゆー面白い反応が見たくて冗談で言っただけだからね。
まぁでも、
(……案の定、顔も耳も真っ赤で可愛いすぎ。)
なんてことを思いながらニヤニヤと(我ながら意地悪な顔で)室ちんを観察してたら、室ちんは震える唇をキュッと一文字に結んで。
キリッと真っすぐにオレの眼を見据えてきた。
……あれ。
この男前な顔は…。
『む、室ちん?あのさ、今言ったの冗――』
『アツシッッ!!!!!!』
『?!(えっ、何叫?!!)』
『…………誕生日、楽しみにしていてくれ…』
室ちんは何かを覚悟したような真剣かつ神妙な顔をして、そう言い残した後、ゆっくりとその場から去って行った。
(嫌〜な予感を肌で感じてはいたんだけど…)
そんなわけで。
ここまでが約一週間前の話。
そして今現在、時刻は10月8日23時50分。
誕生日前日。
つーか誕生日10分前。
コンコンと控え目にノックされた寮室のドアに「……まさかね。」と思いながらも、今までの色んな経験上、若干呆れた気持ちで近付くオレがいるのであった。
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