先輩は最恐悪魔!(虹灰)





いきなりだけど、オレ今、超!!命の危機!!だから。
ふつーの男子中学生がふつーに生活してて『命の危機』を感じるとかありえなくね?!!

って思う。思うけど。
でも必死に息を殺して、身を潜めて、何とかこの場を逃げ切んねーとオレに明日は来ない気がする……。












〜先輩は最恐悪魔!〜












「……お前それで逃げ切れたと本気で思ったのか??」





あ、終わった。
オレの人生たった14年で終わってしまった。

ス、とできた頭上の影を見上げながらオレの時は止まった。

なんでだろう。
完璧に隠れたつもりだったのに、いとも簡単に見つかった理由を誰か教えてくださいでもマジかんべん。

誰もいない屋上に響く恐怖の声。
一体いつの間に……と思いながら、背後に立つその声の主へと恐る恐る振り返るしかないオレ。




「に、にじむら、」
「オイ、"虹村サン"だろーが。」



言い直せ、じゃねーと顔面ボコんぞ、というような凶悪な面と禍禍しいオーラにオレは三角座りをしたまま身体を縮こませてただガタガタと震えた。
うん、マジでボコられる。




「……に、にじ、むらさん、」
「――…屋上か部室か体育館裏。お前の行動パターンは相変わらず単調だなぁ灰崎?」
「うっ……、」
「お前さァ…今回ばっかはいくら寛大な俺でもキレんぞ?」




いやいっつも問答無用でキレてるしアンタ!
全然寛大じゃねーよ!!
つーか寛大な対応された記憶ゼロなんですケド?!
あと拳ボキボキ鳴らしながら言うのやめてくれ、恐怖でしかねーから!!


虹村は威圧的にオレを見下ろしながらジリジリと間合いを詰めてくる。
オレもざりざりと後退ったけど背中がフェンスにガシャンと当たった時点でこれ以上はもう逃げようもなかった。

ただでさえ張り詰めた空気だってのに、その上、いきなりガシャン!!!!って思わずビビっちまう音響かせながら虹村の手がオレの顔面スレスレの場所のフェンスを掴んだもんだから、もはや冷や汗が出るなんてレベルじゃねー。




「言い訳あんなら聞いてやるけど?まぁ許す確率なんかゼロに近ぇけどなァ?」
「……(じゃあ言うだけ無駄じゃねーか…)」




確かに……まぁ…今回はさすがにヤバかったかなーとは思ったけどさ……。
喧嘩した相手が来週の練習試合であたる学校のヤツだなんて知らなかったんだもんよ。

赤司が動いたおかげで警察沙汰は免れたけど、案の定…先方からはキャンセルの連絡が入ったんだったっけ。




「反省、してんのか?」
「……すんませんっしたぁ。」
「…してねーみてーだなぁ…、マジで一回痛ぇ目合ってみるか?なぁ灰崎?」
「はぁっ?!一回って…自慢じゃねーけどもう何十回とアンタに殴られてますけど――…ッんむっ?!!!」




………は?
…えっ???
なに、なんだコレ??


別に近くで睨まれんのも凄まれんのも初めてじゃない。
けど。

顔面に拳が降り懸かることはあっても、唇に何かが触れることは初めてだ。


く、唇…に、
……な…っ…なに…?!!!




「……ははっ、何だその面?別にキスくらい初めてじゃねーだろ。」




そう言いながら目の前の虹村はやけに楽しそうな面してニヤリと笑った。

オレは(当たり前だけど)声さえ出せないまま。
現状把握もできてない。

ただ、今何をされたか、それがわからない程バカでもない。
キスされた、それだけは確かで。

……よ、余計に意味がわからない。




「な、なに、してっ…」
「ああ?何?聞こえねーんだけど。」
「……な、なんで、」



なんなんだよ
なんでキスなんかすんだよ
なんでそんなコトされねーといけねんだよ
オレ男だぞ、嫌がらせにしても陰湿すぎるだろ…っ



言いたいことは山ほどあったけど、でも、ギロリと睨み上げたその瞬間、今度は腹に強烈な蹴りが入ってオレはその場に崩れ落ちていた。

相変わらず一切の容赦のないキツくて重い一撃。
ゲホッと咳込んだオレの顎を掴んでグイッと無理矢理上に向かされた。
そんな暴力行為のすぐ後に超至近距離でニコリと微笑んでくる虹村がマジで悪魔みてーに見える。




「…口で言ってもダメ、力で解らせようとしてもダメ。だからなァ灰崎??」
「っ、ゲホッ、ゴホッ…は、離せっ…」
「もう最終手段なんだわ。」
「離っ…、や、やめ、っ…ンんッ…!!!!」





悪く思うなよ、っていう声が聞こえた気がした。
だけど、これから何をされるのか、
虹村の言う『最終手段』がなんなのか、

まだ理解なんてできなかったオレは頭ん中ぐるぐるになりながら、さっきより何倍も深いキスに耐えるしかなかった。





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