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ヤると決めればヤる。
劉偉はそういう男だった。

拒んでもやめない、という言葉通り、嫌がる福井の服をアッサリと脱がしにかかる。
脱がされてなるものか、と福井も必死で自分のTシャツを左手、そして右手で短パンを掴む。


「や、やめろって、この馬鹿ッ!!」
「…福井まえより力弱くなったアルか?この程度の抵抗だと意味ねーアルよ。」
「ちょっ、マジやめ、ろっ…て!!」



劉が言うとおり、バスケ三昧だったあの頃に比べると福井の体力、腕力、その他もろもろは落ちている。
一方の劉はバスケの鬼・氷室辰也(主将兼エース)のアシストもしつつ、後輩2年の紫原(問題児エース)のフォローもしつつ…現役で強豪バスケ部をレギュラーメンバーかつ副主将として支える身だ。
あの頃以上に全ての能力が一回りは成長している。

そんなわけで、福井が全力で抵抗したとしても劉に敵うはずがないのはもはや必然であった。
ガバッと脱がされるのも、ペロンと引っぺがされるのも、全て必然であった。

そうして劉はあっという間に「パンツ一丁」という格好にした福井をヒョイっと担ぎ、ぎゃあぎゃあという喚き声にはフッと軽く笑って一瞥。
それからはいつものようにポイッとベッドへ放るのだ。




「ぅぎゃぁっ!!」
「…福井うるさいアル。」
「毎回毎回ポンポンと…人をボールみてーに投げんな!!」
「ふふっ、軽い・小さい・投げやすい…確かにボールみたいアル。」
「なんだとっ…、んぅっ…?!!」
「……。」
「んンッ…、ん、っ…ふ、…はぁっ…」
「…は…、……まぁボールにはこんなふうにキスしたりしねーケド?」



不意打ちでのディープキスの後、至近距離で見つめながらそんなことを言われ不覚にも頬を染める福井。
その反応が可愛いらしくて堪らない、と劉の口角が上がる。
小さな身体が逃げ出さないように跨がり、両腕を捕えた。



「りゅ、劉っ…、」
「いい加減諦めろアル、福井。」
「ちょっ…、や、やめっ、」


この状況での「やめろ」はもはや劉にとって興奮材料でしかない。
そもそも劉は福井の「やめろ」「いやだ」が大好物だ。
怒った顔も抵抗する顔も、嫌がって涙を浮かべる顔でさえ大好物なのだ。

つまり、言葉で拒絶するということは劉を止めるどころか喜ばせるだけ。
今回もそうだ。


「劉っ、マジやめろって…!!」
「…やめねーアル。」


楽しそうに微笑みながら顔を近付ける。福井が慌てて顔を背けても、代わりに目の前に現れた赤い耳に舌を這わせるだけ。
別にキスをする場所は唇じゃなくても良い。
耳であろうと首筋であろうと、どこでも良いのだ。



「あっ、ぅ、わっ…」
「…。」


ぴちゃり、とワザと厭らしい音を立てて耳に舌を入れるとビクリと震える小さな肩が可愛い。
耳たぶを甘噛みしたり軟骨部分を尖らせた舌で舐め回すと途端に反応し始める身体が本当に堪らない。

ギュッと目を綴じて、唇を噛み締めるようにして声を我慢する姿にじわじわと性欲が煽られる。

可愛いから虐めたい、
可愛いから泣かせたい、
可愛いから喘がせたい、
可愛いから乱れさせたい、
可愛いから狂うほどに悦がらせたい


福井をあまりに好き過ぎる為か、劉偉の『愛情』というものは世間一般のそれとは少し違っていた。
つまり、多少歪んでいた。
が、劉本人はそれに気付いてはいなかった。



「あ、やめ、っ…ん、」
「…相変わらず耳弱いアル。でもコッチはもっと弱いよな?」
「えっ…?ちょっ…や、劉っ、まっ…待てっ…!!」



胸元へと伸ばされた舌を見て福井はギョッとした。
確かにいつもいつも強引かつマイペースな劉だが、今日みたいに最初から「したくない」と拒絶しても、それでも何ら変わりなく行為を続行されるとは思わなかった。
心のどこかでは「大丈夫だろう」「やめてくれる筈だ」と思っていたのだ。

なぜなら福井は知ったつもりでいたものの、まだまだその認識が甘かったからだ。
自分が劉偉という人物にどれほど深く愛されているか。
きっと福井が自覚しているのはその10分の1にも満たないのだろう。

そしてもちろん、待てと言われて待てるような犬的気質は劉という男には…ない。
その福井の「ギョッとした顔」に満足そうな笑いを浮かべたあと、執拗に乳首を責めた。
暴れないよう捉えた腕はしっかりと固定し、思う存分に小さな突起を嬲る。



「ひぁ…あッ、あ、ぃやだっ…てっ、ぅあっ…」
「…。(声可愛いアルなー…)」


べろりと舐めるよりはチュッと吸う方が反応する、だとか。
尖りはじめた乳頭を擽るように舌で押し潰すと悲鳴に似た声をあげる、だとか。
劉は行為を重ねる度に福井の身体を知り尽くしていく。
そしてどんな発見をしても嬉しいと、そして可愛いと思った。


「ぁっ…、や、いやっ…だ…っ」
「…嫌?じゃあ何でコッチ反応してるアルか?」
「うぁっ、あッ…!!」
「なぁ福井?」



意地悪な笑みを浮かべながら問い掛け、膝で「反応しているところ」をグリグリと刺激する。
男と付き合うのもキスをするのもセックスするのも初めてだった福井が、耳や乳首の愛撫だけで勃起するような身体になったのは他でもない劉のせい。
毎回毎回これでもかという程に、福井の身体、その至る所に丁寧な愛撫を施した結果だ。




「なぁ劉っ…、無理っ…、マジで、やだ…って…」
「勃たせといてその言葉は説得力に欠けるアルよ。…なぁ福井、もうコレ触りたい。手がいいか?それとも口?」
「馬鹿ッ…!!!だ、だめだって、んぁ、あっ…、だめ…っ」



両手をシーツに縫い付けられた状態では何も抵抗できないのに、それでも最後の抵抗だといわんばかりに首を左右に振って「嫌だ」と示す。
その姿がますます劉を煽るとも知らずに。


早く全て脱がせて思うがままに弄くり回したい…と思いながら勃起している福井の下半身を未だ膝で刺激する劉は己の両手が塞がっていることに「さぁどうしたものか」と考えてキョロリと辺りを見渡した。

そして目に入ったのはベッド横のサイドチェストにキレイに並べられていたオシャレ大学生福井健介…の、ベルトコレクション。

導き出された答えは一つだった。



「(…ヨシ、あれで縛ろう。)」
「りゅ、劉…?」
「…福井が抵抗するから悪いアル。」
「え…、何で…オレのベルト…」
「……あ、そういえば、私の誕生日の時もこうしたアルな。」
「え、」
「今度は痕が残らねーようにするアル。」
「………は…?」



青ざめる福井を見下ろしながら劉はニッコリと微笑んだ。
なんの特技だ、と言いたくなるくらいのスピードで福井の両手首を彼のお気に入りのベルトでベッドヘッドに固定する。
紫原が本気でまいう棒を10本早食いするスピードと匹敵するくらいの早業だった。



「…コレでヨシっと。」
「なっ、何もよくねー…!!」
「えーと…拘束しながら生で挿入、で、ナカ出し…、……うん。なかなか興奮するアルな。」



ふふふ、と涼しく笑う劉を見上げながら、「頼むからそういう台詞は心の中だけに留めてくんねーかな…」と福井は涙目になりながら、しかし、どこか達観した気持ちで思った。





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