続・好きキライを克服せよ





寮に到着してから敦は自分の部屋に着くまで俺の手を離すことはなく、ようやく解放されたときには手首が少し赤くなっていた。

さてこれからどうなるのか、と俺は敦を見上げて思った。
すると敦はぽふっと己の口を手で覆い、



「うわ〜室ちんエロい」
「は?!」
「上目遣いめちゃエロい」
「いやしてないし!」



身長差があるんだから俺が敦を見上げなきゃいけないのは必須で、今に始まったことじゃない。
(なのに、え、エロいって!!)


これは…この流れはやはり嫌な予感しかしない、そういう考えしかもう出来ない。
これは…そう、逃げるがwinってやつだ。



「そ、それより…自室に戻らないと…点呼が、」
「はーい、帰しませーん。」



部屋から逃げ、もとい、出ようとした俺の手を再び敦が捕らえた。いつものようにノンビリとした口調なのに、退路を塞ぐようにドアに肩肘をついて俺を見下ろす姿は、その瞳は、いつもと同じとは言い難かった。

見た目だけでいうと敦よりも厳つい容姿の男はアメリカにはごまんと存在する。
だけど、その男たちがまだ可愛く思えるくらい、今の敦はなんだか凄みがある。



「逃げたらだめ」
「……あ、敦…あのな、」
「ねー室ちんさ、なんでオレがあのクソまずいオレンジ物体食べたと思う?」
「…。(いやオレンジ物体って…)」



答え倦ねていると敦の顔がどんどん近くに寄ってきて、本当に近くまで寄ってきて、あんなにお菓子ばっかり食べてるのに何でそんなに肌が綺麗なんだろう…なんて今どうでもいいことを思ってしまうくらいの至近距離になって、
そして。


ちゅっ、とキスをされてしまった。




「…あ、つし…」
「一個だけお願い、きいてくれるんだよねー室ちん?」
「……何か、あるのか?」
「うん。」



真剣な瞳。
あの、敦が。
駄目だ、視線が外せない。





「痛いこともヒドイこともしないからさ、」
「……。」
「セックスしよ、室ちん。」




予想はしていた。
あの時ファミレスで、敦の目を見たときから。
でもここまでストレートに言われるとは思ってなかった。

どうしよう。
俺としたことが、身体が全く動かない。
でもこれは…不安とか恐怖じゃない。

身体中が熱くて、恥ずかしくて、何よりここまで素直に自分を求められたことが嬉しくて、言葉が出て来ない。



「室ちん?」
「……、俺は…」
「んー?」
「…その…同性とのセックスは…初めてなんだ。」
「……うん、(室ちんがセックスとか言うとめちゃエロいなー)」
「だから…多分いろいろ面倒臭いと…思うぞ…?」



何とか言えた言葉に敦の目が丸くなって、それからすぐに苦しいくらい強く抱きしめられた。



「…室ちん、お願い。」
「え?」
「あのさぁ…まじで優しくしたいから、あんま煽んないで。」
「っ!!」




煽ったつもりなんてない。
でも俺の首筋にかかる敦の声が、息が、すごく欲情してることに気付いてしまって、俺はボンッと火がついたように赤面してしまっていた。






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