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ヤバい。
落ち着け、オレ。

どくどくと心臓が早打ちしてる。
目が先輩に釘付けになる。
落ち着け、落ち着け、って頭ん中で何回も繰り返す。
そうしないと今すぐ押し倒してしまいそうなくらい目の前の先輩は扇情的だ。



「…黄瀬?…あー…お前は、その…シャワー…」
「あ…オレはいいっス。さっき部室でシャワーしたんで…」
「そ、そうか…」
「それ、ちょっとおっきかったっスね。」



冗談っぽく笑ってそう言いながら先輩の着てるオレのスウェットに手を伸ばしてみる。
意図的に距離を詰めたオレに先輩は気付かない。
「厭味かよ」と少し唇を尖らせて拗ねたような表情。

この至近距離でその顔。
あまりにも無防備だ。



「…つーかお前…風呂場にいろいろ置きすぎだろ。」
「え?そっスか?」
「どれが身体洗うヤツか分かんねー。」
「……先輩、それボディーソープのこと?」




シャンプーとトリートメントとボディーソープと、あとスクラブしか置いてないオレのシャワールーム。

なのにどれがボディーソープか分からないって先輩は普段何を使ってるんだろう。
っていうか「身体洗うヤツ」って。
ちょっと笑ってしまった。



「てか先輩、すごいイイ匂い。」
「…まぁ、お前のヤツ借りたからな。」



目を合わせたり逸らせたり、ぎこちない様子が手に取るように分かる。
もうそれが可愛くてたまらない。
計算とかじゃなく、素でこんなにも可愛い態度が出来るなんてある意味タチ悪いと思うんだけど。

ああもう…
ほんとに可愛い。

ごめんね先輩。
これ以上の我慢はオレ、無理そう。



「…ボディーソープの匂いじゃないっスよ、先輩。」
「黄瀬?」
「……ごめん、もう無理っス。」
「え、ちょっ…、黄――…ぅわっ!!!」



腕を掴んでそのまま勢いよく後ろのベッドに押し倒す。
シーツの上にボフッと埋まる先輩を跨いで上から見下ろすような体勢。
スプリングベッドがギシッと軋んだ。



「い、ってぇ……」
「…先輩大丈夫?」
「…っ、大丈夫なわけ…っ」



ねーだろ!と続くであろう先輩の言葉がピタッと止まる。
抗議するために目を開けた先輩はオレとバッチリ目が合った瞬間、固まっていたのだ。
そしてその直後、隠しようがないくらいに顔を真っ赤に染めた。

さすがにこの体勢、この状況、……これからオレが何をするのか、自分が何をされるのか、気付いたみたい。



「…先輩。」
「……あ…、」
「怖い?」
「…いや…そうじゃ…ねぇけど、」
「怖くないっスよ。」



強い口調でそう伝える。
先輩の少し怯えたような瞳を真っ直ぐ見つめながら。
怖いことなんて絶対しない、ってもう一度ゆっくり言うと、オレの手に触れたのは温かい温度。

先輩の手が、先輩の肩を掴んだままのオレの手をキュッと握っていた。
そして、先輩もオレの瞳をしっかり見据えて言ったのだ。



「お前のこと、信じてるから。」



いつものキリリとした男らしい目と、いっそ勇ましいくらいの台詞。

でもそれも、オレにとっては超絶可愛くて。
悩殺寸前だった。





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