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「あ、アツシ、待っ…、ぁっ、んっ…、」
「…しょっぱ。」



べろりと首筋を舐められて氷室はカッと頬を染めた。
さっきもそうだが、汗をかいた身体を抱きしめられる事にも抵抗があるのだ。
その汗を舐められることに堪えられるはずがない。



「ん…、室ちんの匂いする。」
「や、舐めるなっ、て…!アツシ、こらっ…、ンっ…!」
「…ん、おいしい。」
「ばっ…そんなはずないだろっ…!!アツシ!いい加減にしろっ…」



首筋に熱い舌が這う感覚だけでも恥ずかしくてたまらないというのに、汗を舐めとられ、その味の感想まで述べられている。
氷室は羞恥心でどうにかなってしまいそうだった。

必死に行為をやめさせようとするが、その一方で気付いてもいた。
紫原の性的なスイッチが完全にon状態になっている。
その事実に。


なんで、どうして。
一体いつから。

色々思うことはあるが、もはやそんなことに思考を巡らせている場合ではない。
なぜなら紫原の手は既に氷室のTシャツの中へと侵入している。

早く止めなければ大変なことになる、それだけは確かなのだ。



「っ…や、アツシ、駄目だっ…」
「…わ、汗すごいね。なんか滑る。」
「…っ!!!」
「室ちん顔真っ赤ー。」



かわいい、と甘く囁かれたと同時にぬるりと耳の中に挿ってくる熱い舌。
氷室の身体から一気に力が抜ける。
それを見計らったようなタイミングで紫原は氷室の背中を大木へと押さえ付け、今度は唇を奪った。
シャツの中の手は氷室の感じる場所目掛けて早急に動いた。

びくびくっと反応する素直な身体に紫原の興奮は高まる一方だ。




「ん、っ、ぅん…!!んンっ…」
「…。(室ちん乳首でめっちゃ感じてくれるようになったなー)」
「っはぁ、っは、あ、…っ、あ、だめっ…アツシ、やっ、」
「やだじゃないし。乳首もう尖ってるけど?」
「あっ…、お前が、つ、抓るから…っ」
「…ねー…それ煽ってんの?」



ただでさえ興奮しているのに。
一応それを堪えて我慢もしてるってのに。
真っ赤な顔で今にも泣きそうなくらい瞳に涙を溜めて言う台詞じゃないでしょ、と紫原は心底溜め息を吐きたくなった。

呆れる程に可愛いすぎてどうしてくれよう、と思ったのだ。




「室ちんてオレをどうしたいの…」
「っあ…、や、アツシ、頼むから、ここじゃ嫌だ…」
「なーに?その可愛い台詞…」
「だっ…だって、いっぱい、いるんだろ…?その、幽霊、とか…」




俺は誰かに見られながらセックスする趣味はないからな…っ!!!、と小声ながらも叫ぶように続けられた台詞に紫原の手はピタリと止まった。

拒むにしてもその台詞はないでしょ、と心の中でツッコミを入れたくなる。

外でヤるのが嫌とか、こんな場所で(墓地で、なんて)ヤりたくないとか、そういう台詞ならまだ理解出来る。
が、幽霊に見られるのが嫌だ、とは。

予想外、というレベルではない。
紫原の予想の遥か斜め上をすっ飛ぶ発言だ。
これには思わず脱力してしまうしかない。

だけど、室ちんらしいな、と少しおかしくなって笑った。




「…ふ、あははっ…」
「?!(アツシが笑った…?!!)」
「あー…もう…室ちん何なの、可愛いすぎ。」
「…は??」
「……そういえばさぁ、さっき言ってたのって何?」
「えっ…??」
「"こうしてるとオバケ寄ってこない"って言ってたじゃん。…あれから頭痛いの無くなったのは本当だし。」




そう尋ねながらジッと見つめるように視線を合わせる。
氷室の答えを待つ間、その唇がどちらの唾液なのかは定かではないが、紅く艶やかに光るのがやけにエロティックだと思った。




「…、いや、その、」
「いまもあんま痛くないし?」
「え、えっとな、その、……………………い、イチャイチャ…してる人間には、寄ってこない、らしい…」
「は?」
「…だ、だから、イチャイチャしてる人間には…」
「イチャイチャ??」
「…、……あ、ああ…イチャイチャ…」
「へーぇ…イチャイチャねー…?」




氷室の口から『イチャイチャ』などという単語が出たことに一瞬驚いた紫原だったが、顔面を真っ赤にさせたまま『イチャイチャ』と繰り返す(繰り返させたのは紫原なのだが)氷室の姿に自然と口角が上がってしまっていた。

可愛くて可愛くて仕方ない。
なんなのこの可愛い生き物は。
マジでどうなってんの、このヒトの可愛いさは。

頭の中がそんなことでいっぱいになる。





「…じゃあイチャイチャしながらゴールまで歩いていい?」
「へ、変な事はしない…よな…?」
「えー?変なことってなーに?」
「…うっ…」
「嘘ウソ、…手つなぐだけならいいでしょ?」





暗いから誰にも見えないよ、と手を差し延べると氷室はそうだな、と笑って紫原の指に自分の指を絡めた。
きゅっと控え目に握ると今度は紫原が悪戯っぽく微笑んだ。




「いいの室ちん?…ユーレイにはいっぱい見られてると思うけど?」



その言葉にまた耳まで赤く染めながらも、繋いだ手を離すことは出来ず、悔しさと恥ずかしさに唇を噛むしかない氷室であった。















そして数分後。
ゴール地点にて。




(うわぁっ!!!!熊ーーー!!!!?)
(アツシ、下がってろ!っ…オラァっっ!!!!)


ばきっ!!!
※廻し蹴り炸裂音


(……ふぅ…、アツシ大丈夫か?!)
(…うん、つーか室ちん…それって…)
(え?…ああっ!!岡村主将!!!?)



そんなわけで氷室の強烈な一撃を喰らった岡村はその場で失神。
(文句を垂れながらも)紫原によって無事学校まで運ばれた岡村は、同じく先に気絶していた福井の隣へと寝かされることになった。


陽泉高校バスケ部の主将と副主将が揃ってダウンし、彼等の後輩らによって夜通しの看病がなされたというこの一件。

言うまでもなく、暫くは面白おかしく語り継がれることになるのであった。






〜END!〜





********


陽泉が大好きすぎてほんとなんのこっちゃわからん話に仕上がった…(・∀・)

紫原くんの霊感のクダリは私の妄想というか希望!
同じく氷室さんと赤司さまの霊感クダリも妄想かつ希望!

でも赤司さまに関しては本当にそうなんじゃないかな?と思う。


とにかく紫氷・劉福・岡村・まさこちん!!!
大好きーー!!!


2014/8/15
キサラギハルカ




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