劉誕生日記念小説







今日は7月19日、劉の誕生日。

つまりまぁ…なんつーか、こういう言い方すんのは本当どうかと思うけど…、うん。
だからつまり、

………オレの…こ、こ、こっ……………………いび……………と、の、誕生日だ。


だから(別にプレゼントっていうほど大したモンじゃねーけど)渡したい物もあるし、とりあえずオレのマンションに呼び付けた。

チャイムが鳴って玄関を開けると、劉の奴は黒のTシャツとダメージデニムっていうシンプルな格好をイヤミなくらいサラリと着こなしてやがって。
(…なぜか少しドキッとした自分にものすげー腹が立った。)



『……よぉ。』
『久しぶりアル。えーと…お招き頂きアリガトウゴザイマス?』
『ばーか。いいから早く入れ。』



劉なりの日本流の挨拶に軽くツッコミ入れて迎え入れる。
劉を玄関に招いてからドアを閉めようと腕を伸ばしたらその腕を突然掴まれた。
「…え?」と思う暇もない。
そのままドアに押さえつけられるような体勢になってオレは目を見開いた。

NOーーーー!!!!!

と叫ぶ暇も、勿論ナシ。




『――っ…ん、ぅッ…!!』
『……。』




出会い頭にキスしなきゃなんねーのは中国の挨拶かなんかなのか?!!!
毎度毎度こういうことをされると心臓がもたねーんだけどオレ!!

っていうか、ドア!!!
まだ閉まってねーんだって!!
もし、こんなことしてる(つーか"されてる"んだけど!)瞬間をご近所サンに見られでもしたらどう責任とってくれんだ!!!

馬鹿野郎!
馬鹿クソ馬鹿劉のアホ!!!
(…つーか、…な、長ぇんだよ……っ)




『ん、っ、は、はぁっ…は…』
『(うわ、エロい面アルな…)……じゃーお邪魔するアル。』
『〜〜〜〜〜ッッ…』
『どうかしたか福井?顔面真っ赤アルが。』
『…別にっ!!(お前をブチ殺してーと思ってただけだ!!)』




好きなだけ人の口ん中ベロベロ舐めまわしやがって…なにを涼しい面して「お邪魔します」だこのやろう!!!
「どうかしたか」じゃねーわ!!!


…くそっ……
……むかつくっ…
なんでオレがこんなことで…顔赤くなんねーと……いけねーんだよ…



『福井、』
『……お前ほんとムカつく…。』
『…。(そんな可愛い顔して言われてもな。)』
『何ニヤニヤしてんだよ!!』
『してねーアル。』
『おもっくそニヤついてんだろが!!』




ぼかっ、と後ろから蹴りを入れると劉はダメージを受けた背中をさすりながら「暴力反対アル」と唇を尖らせた。
もちろんそんな言葉には構わずそのまま、クッションを用意した位置まで蹴り続けてやった。










……で、軽く飯にして、そのあと引き出しに用意してた…プレゼント、を渡してやったんだけど。

その数分後に一体ナニがどうなったらこんな状況になるというのか。

誰でもいい。
説明求む…!!!!





「おい劉、これは何のマネだ…」
「福井が悪い。」
「…はぁっ?!!」



オレの問いに、予想もしない答えで返す劉に思わず殴りたい気持ちになった。
だけどその望みは叶わない。
というのも(まぁ本気で殴ったりはしない良心と、)物理的…というか状況的に不可能だからだ。

なぜなら。




「これ外せ。マジで殴んぞ。」
「…殴られるって分かってて外すの馬鹿アルよ。」
「……つーか…こんなことの為にやった訳じゃねーんだけどっ?!!!」
「何の前触れもなく可愛いことするからアル。私を煽った福井が悪い。」




……いや、
いやいやいや、
ちょっと待て…!!!!

オレは、「ほらよ、やる」っつって…(むしろ自分では全然可愛気ねー言い方になっちまったって思ったくらいに)素っ気なく…安物のプレゼント渡しただけだぞ…?!!!





『…まぁ…その…誕生日おめでとう…』
『福井、コレ…』
『……練習頑張ってんだろ?…IH応援行くから。』
『―――…。』



そんな二言三言のやり取りの後、急に黙りこんだ劉。
で、気付いた時にはこんな状況だった。


何が可愛いかったのか
誰が可愛いかったのか
で、何がお前を煽ったのか
で、その結果何でオレは押し倒されたのか

…やっぱり全然理解できねーんだけど!!!

あと…押し倒されんのも問題だけど、これ、手首縛られてるっつーか……拘束?されてるのは何なんだ!!!


手首に固く結ばれたブルーの紐。
オレが劉にプレゼントしたはずのバッシュの"替え紐"だ。

前にメールで、『練習中に靴紐がまた切れたアル。もうこれで3度目アルよ!荒木監督の練習量とメニューえぐすぎるアル!!』って愚痴ってたから。

だから、……劉のバッシュに似合うかなとか…思って買ったブルーの紐。


それがなんで今、思いっきりオレの手首に巻き付いてやがんだ…!!!


いや、それより何より、……ぶっちゃけオレを見下ろす劉の顔とか…雰囲気が、もうイロイロヤバイ。
これはもう、オレ的に煽ったつもりなんか微塵もなくても、劉のやつ…妙なスイッチ入ってやがる。

全力で抵抗しねーと、マジでヤバイ気がする。
今までの経験と勘がそれを告げている。
つーか……心臓がどくどくどくどくうるさい。




「福井…、」
「ちょっ…、ば、ばかっ…やめろっ…!!!」



ハッと気付いた時には劉の顔が間近に迫っていた。
まさに唇が触れるギリギリ一歩手前、顔を横に逸らすことで何とかキスされんのは防いでみせた。
………間一髪だ。




「む…逃げるなアル。」
「に、逃げるだろっ、普通っ!!あほっ!!」
「……ますます煽られたアル。福井は私を煽る才能だけはピカイチアルな。」
「そっ…そんな才能要らねぇっ…んぅッッ!!!!!」



ぐわっ!って言い返したオレの両頬に伸びた大きな手が、グンッとオレの顔を引っぱって。
床から頭が浮いたと同時に、唇はもう劉によって塞がれていた。

いきなりの深すぎるキスに息をすることもままならない。
目を開けることも出来ない。

だって、唇を割って、熱い舌が入ってきて…その舌がオレの舌に絡まってくる。

こんな、え、エロいキス…されて目を開けれる余裕なんかない。
オレ相手にそんなことをしてる劉の顔、まともに見れる訳がない。



「…ッン…!!ん、んっ…!!!」
「…。(福井はキスすると絶対目ェ綴じるアルな。)」
「んンっ、ん、ッ…」
「(…まぁ何でも可愛いからいいけどな。)」
「ふ、ぁっ…、」




一体何秒くらいキスされていたのか。
悔しいことに身体から力が抜け切ってしまったオレを見下ろしながら劉は言った。
何だか良からぬことを企んでるような面を隠しもせずに、だ。



「…一回ヤってみたかったアル。」
「な、なに……?」
「アツシが言ってたネ。拘束してヤるの、なかなか興奮するからオススメー…ってな。」
「………は?」



言いながら劉は楽しそうにペロリと赤い舌を見せた。
オレはもう、縛られた手首に尋常じゃないくらいの汗をかいているような気がする。
(いや、既に背中にも…嫌な汗が流れている気が…する…。)


そんなオレの様子に気付いているのかいないのか、劉は真上から真っ直ぐにオレの瞳を見つめて、更に続けた。



「…まぁあくまで相手の同意がないといけねーみたいアルが…」
「…。(す、するわけねーだろ…!!)」
「ま、その点は心配ねーアルよな?」




やたら自信満々に、気持ち悪いくらいの笑顔でそんな台詞を吐いた劉。
その会話(?)の流れについていけてないオレに、笑顔は笑顔のまま―――…だけど明らかに威圧的な瞳を向けて、静かにこう言ってきやがったのだ。



「……誕生日くらい私のお願い聞いてくれるアルよな?福井?」



……誕生日って…
何でもアリなのか……???

心の中で弱々しくツッコミを入れてみたものの、……実際は。
劉のあまりの迫力にオレの首はどういう訳か小さく縦に頷いてしまっていた。






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