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「ナイスパス、アツシ!!!」
「…打たせん!」
「ッ!!!……流石に戻るのも早いな。」




氷室にパスが繋がった直後、緑間は氷室の前に立ちはだかっていた。
間に合っていた。
3Pだけではない、それを良く知っていたはずの氷室も思わず感嘆の声を漏らさずにはいられない程だ。



「緑間!!!」
「よっしゃ!止めろよ真ちゃん!!」



高尾の声に、言われなくても、と緑間の鋭い視線が氷室を捉える。
――…1on1。


氷室の身体がぴくりと動く。





「――…っ、くッ、」
「真ちゃん!!!!」





一瞬の出来事。
ただ、時が止まったように。
そして静かに流れた時には、緑間は氷室にペネトレイトを許していた。


数秒の間に入れた細かなフェイント。
緑間でさえも引っかかって"しまいそう"になった………引っかかりこそしないそのディフェンス力はやはりさすがと言わざるを得ない、

…が、一瞬のスキさえ作れれば、そこを突破することは氷室にとって決して不可能な事ではなかった。





「氷室はウザいくらいアツシと1on1してるアルよ。…緑間だろうと負けはしねーアル!」
「(アツシは毎回逃げ回ってっけどな…)」
「(すぐ捕まってしまうんじゃ…氷室怖いのぅ…)」





後方からのチームメイトの声に氷室は心の中で「ウザいとは心外だな」と思いつつ、劉あとで覚えてろよとボソリと呟く。


そしてそのままシュート体勢に入ろうとしたが、



「ここで止めてやる!!!!」
「…っ、うぉおぉっ…!!」



緑間が止めた僅かな時間でゴール下まで距離を詰めていた大坪と木村がダブルブロックに跳んだ。


だが氷室に迷いはなかった。
鷲の眼を持ってるわけでもない。
鷹の眼を持ってるわけでもない。

だけど、




(……どこにいるのか、すぐ分かる。)





「――…っ、室ちん…!!」





シュートではなく、後方へのパス。
声が耳に届くより数秒前に氷室はもう動いていた。

吸い込まれるように、正確に。ボールは紫原へと移った。








ガァンッッ!!!!!!!!






ミシミシとゴールが軋むほどのパワーに、その場にいる選手全員が敵も味方も関係なく、ゴクリと咽を鳴らす。



視線は紫原の背中に集中していた―――…








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