赤司くんの言うことは。
今回の合宿に参加した者全員の視線が赤司くんに集中しているのが分かる。
赤司くんの声は決して大きいとは言えないのに、どういうわけか本当に良く通る。
その声に視線だけではなく耳までも集中させられる。
「まず、引率の陽泉高校荒木雅子監督、同じく桐皇学園高校の桃井、誠凛高校の相田リコ監督…3名は女性ということもあり今回個室を用意させて貰った。」
この赤司くんの言葉にいち早く反応したのは当人達だ。
「こ、個室なんて…贅沢すぎて緊張するわね…」
「だが有りがたい。今回の合宿で得たデータをゆっくり分析するには個室は助かる。」
「めったにない機会ですし赤司くんがああ言ってるんですから甘えちゃいましょうよ、ね?」
普段合宿といえば海近く…もしくは山近くの民宿がいいところですからね…。
こんなに豪華なホテルで個室なんて、逆に緊張する監督の気持ち分かる気がします。
桃井さんの一言で「いいのかしら」といいつつもまんざらではない様子になりましたが。
陽泉の監督さんも納得したところでその後ろから紫原くんが「ちょっと、」と声をかけた。
「え〜まさこちん個室ずりぃ〜。赤ちんオレらは個室じゃねーの?」
そんな紫原くんを陽泉の岡村さんと福井さんが「こら!!わがまま言うな!!」的に慌てた様子で止めようとしていますが、赤司くんは気にもせずサラリと続けます。
「すまないね敦。今回のホテルはもともとカップルや夫婦……つまり二人組をターゲットにした作りでね。ほとんどがツインルームなんだ。だから……」
言いながら、赤司くんの瞳がチラリと紫原くんと……氷室さんを捉えていた。
…あ、もしかして。
僕の予想が正しければ、このあと火神くんが騒ぎ出す可能性が高いので止める準備をしておきましょうかね。
「え〜オレも贅沢個室が良かった〜」
「ツインルームも十分な広さはある。…くれぐれも先輩には迷惑をかけるなよ、敦?」
「……ん?赤ちんソレどーゆーこと?」
「敦は氷室辰也さんと同室にさせて貰った。部屋はA‐1だ。」
…………予感的中です。
そして紫原くん…さっきまで駄々こねてたのに数秒沈黙したあと「ふーん、あっそー」って言ってアッサリ氷室さんの隣に戻りましたね…。
小さくガッツポーズしたの僕からバッチリ見えましたけど?
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