黄瀬誕生日記念小説





※黄瀬が高校1年の時の誕生日。
※つまりまだ笠松先輩にパーフェクト片想い中。

そんなお話。



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海常高校3年、森山由孝は今、握り締めた拳をどうしてやろうかと考えていた。

選択肢1『我慢する』
選択肢2『容赦なく振り下ろす』

至ってシンプルな2択。
さて本当にどうしてやろうか、と視界の先に映る人物を冷ややかに睨み下ろす。

そうとは知らないその人物は、無駄にサラサラした金髪をかきあげ、悩める頭を抱えるようにして真剣な瞳を森山へと向けた。
そして、キリリと一言。




「――…笠松先輩からのチューが欲しいっス!!!」




直後、森山の口角がヒクリと引き攣った。
言うまでもなく『選択肢2』を選ばれてしまった黄瀬が痛恨の一撃を食らうシーンを小堀だけがにこやかに見つめていた。












〜黄瀬誕生日記念小説〜















「いきなり酷すぎるっスよ!!森山先輩!!!」
「お前が2回もアホ発言するからだろ。そういうのを自業自得という。」
「ははは、黄瀬は本当に笠松が好きだからなー」





そんな3人の会話を呆れ半分・引き半分の感情で傍観する中村と、引いてもなければ呆れてもない……というよりは、ただよく理解していないだけの早川。

今しがた部室に入った中村は、阿呆な会話はまぁいつものことだけど…と思いつつ、傍にいた早川に尋ねてみた。




「…今度は何をふざけてるんだ??」
「あー、もーすぐ黄瀬の誕生日だか(ら)なにが欲しいのか森山先輩と小堀先輩が(リ)サーチしてるんだってー!!!」
「………へぇ。」




…よし、とりあえず関わりたくない!!
中村は心中でそう叫び、早々に着替えを済ませて部室から出て行ったという。


とうに着替えを済ませていた3人はまだ、先程の会話を続けている。
ちなみに普段ならこういった騒ぎは笠松の一喝で治まるものだが、笠松不在を狙っての会話ということもあり、もはやアンストッパブル状態である。





「森山先輩が言ったんじゃナイっスかぁ!!欲しいものあるかって!!」
「確かに言った。だがお前の答えは俺の求める答えとは程遠かった。だから殴った。正しい判断をした俺は全て正しい。」
「ちょっ、なに赤司っちみたいなこと言ってんスか(笑)」



なんも正しくないっスよ、と笑いを堪えきれない黄瀬に森山が再び拳を握り締める。
しかしここで話の流れを元に戻すあたりがさすが小堀といったところだろうか。
森山と黄瀬の会話に絶妙なタイミングで参加してのけるのだから。




「黄瀬、お前の誕生日を祝えるのも今年だけだからな…欲しいものが本当にソレなら……まぁ…叶えてやりたいとは思うが…」
「ちょっ、小堀!??笠松になんて説明するつもりだよ!!!俺殴んのはいいけど殴られんのとか本気で嫌なんだけど?!!」
「……森山先輩なかなか最低っスね。」





最低でも何でもいい、笠松の攻撃はとにかく痛いから嫌だ!と言い放つ森山に、小堀が困ったように眉を下げて笑った。


6月18日の黄瀬の誕生日、
来年になると卒業している現3年の森山と小堀は最初で最後のお祝いだからと黄瀬本人が望むプレゼントで祝ってやりたいとは思っていた。

しかし…
望むものは『笠松先輩からのチュー』だと宣言されてしまった。
この世でこれほどまでに入手困難なプレゼントがあるだろうか。

しかし、ここでも小堀が見事な提案をしてみせたのだ。




「…うん、よし。この作戦でいくか。」
「その作戦で俺が笠松にシバかれる可能性は勿論ゼロなんだろうな?!」
「はは、まぁ任せとけって。じゃあ森山、黄瀬…あ、早川もいたか。皆よく聞いてくれよ?」




――――…笑顔の策士、


この日以来森山は陰で小堀のことをそう呼んだとか。






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