step by step





もうそろそろいいかな〜って思った。
だから、キスした。
シチュエーションはむしろ良かったと思う。

オレの部屋でオレの買ったワンピースの最新刊を先輩は笑いながら見ていて、そんな先輩の様子をオレはじっと見つめていて…見つめすぎたからだろうか(だって笑う顔が可愛いすぎんだもん)、先輩がふいにオレの方を向いて、バチッと視線がぶつかったんだ。

けっこう至近距離で視線が重なって、先輩の頬が少し赤くなったのをオレが見逃すなんて有り得ない。
『いける』って頭ん中のオレが叫んだ。
『もうそろそろいいかな』って思ってしまった。


手を伸ばして先輩の腕を引くと「待て」って言いたそうな焦った顔に変わったけど、言われる前に唇を塞いだ。








「先輩、せーんぱい!」
「……。」
「…怒ってんスか?」
「べっ、別に怒ってねーよ!!」





キスしたら先輩は途端に固まって、もっと先に進みたかったオレの心中おかまいなしに、まるで錆びた薇のようにギギギと首をマンガへと戻した。
さっきのキスはいったいどこへ???って聞きたくなるくらい、甘い雰囲気には程遠い空気の中、ワンピースを読み終えるまで口をきいてはくれなくて。

で、読み終わるまで「待て」していたオレがさっそく問いただしてるというわけ。



「怒ってないならこっち向いてくんないっスか?」
「……、」
「ねぇ…せんぱい、」
「…くそっ…」



チッと悔しそうに舌打ちして、ようやく先輩の目がオレに向けられる。

いやいやいやいや!!
予想はしてたけど、してたんだけど!!!
どんだけ可愛い顔してんスか!!!

さすが先輩、オレの予想を軽〜く超えてしまうくらいの可愛い顔をしてるもんだから(めっちゃ顔赤いし!!キスしただけなのにっ!!)それだけでオレの下半身が元気になってしまうくらいヤバかった。


オレから好きだと告白して
先輩は『嫌いじゃない』と返してくれて

オレからキスしてみたいと頼みこんで
先輩は『…仕方ねーな』と返してくれた

そんな感じで今日にまで至って…まぁつまり、ハッキリと付き合ってる宣言が出来てない関係だけど、それは先輩の性格上仕方ないことだと受け止めている。

だけど事実上、これってもう付き合ってるってことで、そうとなればキス以上のことをしたいって思うのは健全な高校男児なら当然で。
それは勿論オレも例外ではなくて。

今にも視線を外してしまいそうな先輩のでっかい目をじぃっと見つめて真剣に言ってみる。



「…もっかいしたいっス。」
「は、はぁっ!!?」
「したい。我慢できないもん。」
「いや、ちょっ…待て!」



ぐいぐい距離を詰めると壁に追いやられた先輩がオレの両肩を掴んで必死に静止させようとしてきたけど、無理。止まりませんから。



「黄瀬!!」
「…オレのこと嫌いじゃないんスよね?」
「そ、それとこれとは、」
「違わないっスよ。これでもだいぶ我慢出来た方っスよ。褒めてほしいくらい。」
「…っ、」



真面目に伝えると先輩がカッと赤くなった。
そういう反応するくせに、なんで拒み続けるんだろう。
もしかしてまだ抵抗あんのかな…男同士ってことに。
(ただでさえ恋愛云々に慣れてないからなぁ)



「先輩が本気で嫌ならしない。けど…そうじゃないなら、」
「黄、っ…瀬、」
「お願い、先輩。」
「〜〜〜っ…、」



唇と唇の距離は5cm。
今まで以上に真剣な瞳で見つめて言うと、ぐっと何かを覚悟したように先輩の唇が一文字になった。
オレの肩を押さえていた力がフッと軽くなる。

いいもダメも何も言わないけど、これは、待てが解除された合図だって、


そう思っていいんだよね?






[ 50/217 ]

[*prev] [next#]
[戻る]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -