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紫原敦は「面倒臭い」という心情からあからさまに顔を歪ませた。
目の前にはそんな紫原の態度に「お前仮にも私、先輩アルよ?」と言いた気な劉の姿。

氷室に続き、福井健介へ贈る誕生日プレゼントのリサーチ継続中である。

紫原はこう見えて頭も良く(氷室に比べればまだわりと)常識の範囲内に収まる人物だった。

加えて、紫原の恋人は男であり年上でもある氷室辰也だ。
同姓であり年上の恋人を持つという共通点から、劉は是非とも紫原の意見を取り入れたかったのである。





「福ちんにあげるプレゼントねー…」
「ああ。日本人なに贈ると喜ぶアル?」




一応考えるそぶりは見せる紫原。
劉は無言で用意していたまいう棒を1つ差し出し、有力な情報を仕入れようと試みた。

案の定、紫原はそれを受け取り「えっとねー…」とその口を開いた。





「室ちんはバスケのDVDとかあげたら大喜びするけど?」
「…それは知ってるアル。そんな狂ったバスケ馬鹿は氷室くらいアル。私は普通のプレゼントが知りたいアルよ。」
「普通ねー…」

また考えるそぶり。
そして何かをねだるような視線。
劉は悟った。
どうやら情報1つにつき、まいう棒1本必要なのだと。

氷室のクソどうでもいい情報でまいう棒1本消費したのがなんだか腑に落ちないが、背に腹は替えられない。
追加の1本を差し出した。





「えっとね、オレは両手で抱えきれないくらいのお菓子貰ったら嬉しいかなー」
「………。」




それも知ってるアル、と劉は冷めた瞳で紫原を睨み上げた。
ここまでのまいう棒2本分の情報…全く役に立たないアル、と睨む瞳に怒りが宿る。

そして気付いてもいた。
紫原は頭がいい、ここまではまんまと思惑通りにまいう棒を消費させられていた、…そのことに。

そして仕方なく3本目のまいう棒を差し出し、今度こそはと紫原の言葉を待った。

そうしてようやく得た情報は意外とまともなものだった。
……のだが。





「こないだ見た雑誌にはねー、貰って嬉しいプレゼントの1位は"花束"ってなってたよー」
「!それアル!!花束アルな!!」
「…うんとねー、確か…花言葉とかにキュンとくるらしいよー。」





もっともらしい理由に、さっそく買いに行ってくるアル!!と意気込む劉は早々にその場をあとにした。

足が遅いと氷室に指摘されたことが嘘のように、劉の背中はもうほとんど見えなくなっていた。
そんな彼を見送りながら、





「…あ、でもその雑誌、ねーちゃんのだった。」





気付くのがひと足遅い紫原の独り言であった。





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