年下彼氏に御用心
もう何度目かわからないアツシとのセックスの最中(前戯中?)のことだった。
「室ちん、脚ひらいて。」
そんな言葉に俺は顔に出ずとも少なからず動揺した。
命令なのかお願いなのかは分からないが、表情一つ変えずにそんな台詞がよく言えるな!と、いっそ怒鳴りたくなる。
でも動揺してると悟られるのは何だか癪だから、俺に跨がって俺をじっと見下ろしている紫色の瞳を恨めしげに睨んで言ってやった。
「…、…嫌だ。」
「ヤだじゃないし。」
「嫌なものは嫌だ!」
「?ちゃんと解さないと痛いの室ちんなんだけど?」
俺の否定的な言葉にアツシはキョトンと首を傾げる。
分かってないんだ。
さっきみたいな台詞が…俺にとってはどんなに恥ずかしい台詞かってことが。
こういう時は本当に困る。
曖昧に言うとアツシには伝わらない。
かといって…男同士の行為に慣れてない俺には、さりげなく伝えるテクニックもない。
つまり、正直に伝えるしかない。
……ああ…本当に、困る…!
「室ちん?」
「お、お前は、挿れる側だから分からないのかもしれないけど…!自分から…脚を開くなんて…恥ずかしくて死にそうなんだからな…」
「………、(うわ、めっちゃ可愛いこと言ってっし…)」
「あ、アツシ…?」
ちゃんと分かってくれたのだろうか。
なんか動きがストップしたけど…。
今度は俺が首を傾げてアツシを見る番だ。
目が合えば、アツシの顔は少し赤くなっていた。
眉間にシワを寄せて、何を言い出すのかと思いきや。
「…煽んなし。」
「はっ?!!」
煽ったつもりなんかない。
なのにアツシが「…可愛いくてたまんねーんだけど」なんて更に爆弾発言を付け加えるもんだから、俺もアツシにつられるように赤面してしまった。
馬鹿か!アツシは馬鹿だ!と罵ってやろうにも口がわなわなと震えて声が出ない。
そんな俺をアツシは数秒黙って見下ろしてたけど、突然「あ、そーだ。」と何か閃いたように両手をポンと鳴らした。
またもや首を傾げる俺に、またもや表情一つ変えず、アツシは言った。
「じゃあ…目隠ししてヤってみる?」
「…………えっ?」
「だから目隠し。」
「What?!!!!!!」
「見られんのが恥ずかしいんだったら見られてるところを見れなくしちゃえばいいんじゃねーの?」
「???え、どういう…?えっ?」
「…説明面倒臭いから実践ね。」
え?えっ?と事態が飲み込めてない俺をよそに「じゃー、はい、今からスタートね」…っていう、なんともマイペースな声が合図となって、俺の目は闇に閉ざされることになっていた。
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