9〜洛山〜









準備は整った。
少し急いてしまったが、監督が言うには全ての高校から「参加する」と返事を貰ったとのこと。

大輝あたり…桐皇は参加するかどうか最後まで予測しづらかったが…、まぁ僕の命令は絶対だ。
(というかテツヤと火神大我の名前を出せば大輝は参加すると踏んだのだが、アッサリ引っかかったということか。)





「征ちゃん、結局どうなりそうなの??」
「赤司〜!!!宮地さんにメールしたけど返事こない!!!」




両側から質問してきたのは玲央と小太郎。
今回の合宿話の発端はこの二人からの相談から始まったようなものだった。



















『高尾くんに会いたいわ。あと順平ちゃんも…どうしてるかしら…』
『……東京遠いよ〜…宮地さんに会いたい…』




玲央は練習中もどこか上の空だったし、小太郎に関しては瀕死の状態かと思う程に日増しに元気がなくなっていた。
部室では毎回そんな話を口にしていたように思う。

そんな二人に残りのメンバー…永吉と千尋は、同姓同士の恋愛は「意味がわかんねぇ」と一刀両断。掛ける言葉さえ持ち合わせていなかった。

そろそろどうにかしないといけないか、と思案していた僕に、ふいに玲央が言ったのだ。






『…征ちゃんは平気なの?』
『?何がだ?』
『降旗くんよ。会えなくて平気?……私だったら堪えられないわ、遠距離恋愛なんて…』




そう言った玲央の瞳はどこか寂し気で、憂いを秘めていた。
加えて小太郎までもがこう言った。




『ねー赤司、なんとかなんないかな?!他校のヒトと会える方法ないかな??』
『…小太郎まで何を言い出すんだい?』
『だってオレ本気で宮地さんに会いたいの!好きな人なら会いたいって思うじゃん!!赤司は違うの?』




真っ直ぐ問う小太郎の瞳には力強さがあった。

好きな人に会いたい、……そんなこと、当たり前だ。
遠距離恋愛は辛い、それも当然だ。

二人は『僕は例外』だとでも言いたいのか?

そんな筈ない。
僕だって…いつも思っている。

授業中も
部活中も
あの、広くて静かな自分の部屋では特に



『光樹に会いたい』




……そう思ってしまえば何だってしてしまいそうになる自分に気付いていたから、だから、ずっと我慢していたのにね。

本当に…
玲央も小太郎も、困ったやつだ。






『…そうだね。たまにはお前達の望みを叶えてやるのもいいかもね。』
『?征ちゃん?』
『赤司、それってどゆこと???』






首を傾げる二人を見て、思わず口元が緩んだ。
面白い事を思い付いたから、だ。


―――――そうして計画した今回の共同合宿。


急遽計画した割には、まぁ…なかなか愉快なプログラムに仕上がったと思う。








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