告白大作戦
「好きっす!!」
「…短すぎ?」
「好きっす、大好きっス!!付き合ってくださいっ」
「うーん、普通?」
「大好きっス!一生大切にします!!!」
「……重くないかソレ?」
立て続けにNGを喰らって「じゃあどうしたらいいんスか!!」と涙目で訴えると、森山先輩はフッと意味ありげに口角を上げた。
大袈裟に首を横に振って「そんなんじゃダメダメ」って言いたげな様子。
「…先輩ほんとに協力してくれんスよね??」
「もちろんだとも!」
不安になってじとりと見ながら念のために尋ねると胡散臭い笑顔と言葉遣いで返される。
合コンのセッティング2回分を条件にオレが森山先輩に頼んだのは、笠松先輩への効果的な告白の台詞を教えてもらうということ。
悔しいことに部活以外のあの人をオレはほとんど知らない。
どんな食べ物が好きかとか
得意科目は何かとか
授業中はどんな感じかとか
休み時間は何をしているのかとか
誰と仲がよくて、どんなことを喋っているのか、とか…
学年が違うだけで知りたくても知れないことが多すぎて、つい森山先輩の前で愚痴を零してしまったら、
『女の子紹介してくれんなら笠松のこと何でも教えてやるけど?黄瀬クン?』
………って感じで今に至るって訳。
一年からずっと部活も一緒でクラスも一緒だから笠松先輩のことならだいたい分かる、って言ったのを信じてみたんだけど…
「ほんとに先輩がグラッとくるような告白があるンすか〜…?」
「ある。笠松はああ見えてかなり純情だからな。」
「でもオレさっきからダメ出しばっか喰らってんスけど…」
「だってお前レパートリー少なすぎ。」
「……告白ってされるばっかりで自分からって初めてなんスよオレ…」
言った瞬間、森山先輩の顔がまるで苦虫踏んづけたみたいにイガッと歪んだ。その後笠松先輩ほどではなかったけど腹に一撃お見舞いされてしまった。
「…じゃあ森山先輩ならあの人に何て言うんスか?」
「いいか、よく聞いておけよ。一度しか教えないからな。」
「はいっス!!」
急に真面目な顔と声に変わった先輩に、オレは胸を踊らせて言葉の続きを待った。
「……笠松にはな、」
「ごくりっ」
「『愛してる、あんたを名前の通り幸せにしてあげる、幸男っ!』…でオッケーだ!」
「………えっ、ええっ?!!」
ぐっ、と親指を立ててドヤ顔する森山先輩。
オレは想像を超えたその告白の台詞に思わず赤面した。
あ、愛してるって…
いや、好きだけど
大好きだけどっ…
(そっか、…『愛してる』か…)
カカカカカーッと顔面が熱くなる。
確かにそれならオレの先輩への気持ちが本物だってことがキチンと伝わるかもしれない。
今までいろんな女の子に好きって言われてきたけど『愛してる』ってのはなかったし…インパクトのデカさも半端ない!
「ここまで情熱的な告白受けたら笠松だってグラッとくるだろ!言えそうか、黄瀬?」
「…い、言うっス!!」
愛してる云々よりも、後半がちょっと難しい気がするけど
(ゆ、幸男さん…って呼んでも怒られないのかな…)
でもやる!!
男黄瀬涼太、やってやるっス!!
「そーいや笠松さっき部室行くって言ってたけど。」
「じゃあオレ言ってくるっスよ!!」
「合コンのセッティングまかせたぞー!!」
背中に森山先輩の声を受けて、応えるように手を振ってから部室へとダッシュ。
そんなオレを見送りながら、森山先輩が「あいつマジで阿呆だなー」なんて言っているとは露知らず。
その後、部室でロッカーの整理をしていた笠松先輩に、森山先輩直伝のあの台詞を勢いよく叫んだオレが
これまた苦虫踏んづけたみたいにイガッと顔を歪めた笠松先輩にボコボコにされたのは
……言うまでもない。
〜END〜
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