黄瀬と笠松 結!









好きになってしまったあの人は、バスケにすごい一生懸命で直向きで、目標に向かって一直線に頑張る人で

仲間想いでキャプテンシーもそりゃあすごくて、誰からも尊敬されるんだろうなぁって思える人で


でもどっか無理してんじゃないか、って
責任とか全部独りで抱え込む性格だから、どこかが危うげで、儚くも思えて

気付いたら目で追ってた
オレの視界からあの人がいないってコトが有り得ないくらい、ずっと先輩を見ていた

一生懸命な姿
仲間を励ます姿
必死に練習する姿
独りでプレッシャーに耐えようとする姿

怒った顔
笑った顔
嬉しそうな顔
悔しそうな顔


ずっと、見てきた


黄瀬って呼ばれたら嬉しくなって
頼りにされたら舞い上がりそうになって
あの人の視界にも、オレが映ってるんだなって思えたときは幸せだと感じた








〜結!〜








「………あ〜あ。…今日も休んじゃった…」




部室とは逆に歩きながら、オレは色々複雑な気持ちになってた。
部活を休むのは今日で2日目。
駄目だって分かってる。
WCも近いってのに…休むなんて有り得ないって、ちゃんと分かってる。
だけど、どんな顔してあの人に会えばいいのか分からない。

無理矢理キスして…放心状態の先輩から逃げるように帰ってしまった。


………会えない。
怖くて会えないっ…!!!
(すげぇ情けないってことも分かってるけど…!!!)


だからっていつまでも休み続けられる訳がない。
バスケしたい。練習したい。
先輩と同じで…オレだってバスケが好きだから。

でも先輩が練習休むなんてことは200%有り得ないから、オレが顔を出した時点で顔を合わすのは『絶対』ってことで。


そしたら…その時オレはどうしたらいいのか。
いくらごめんねって謝ったって結局好きな気持ちは変わらない。変えられない。
…だから、オレは先輩から何か言われるのを待たなきゃいけない。
そして言われた言葉を受け止めなきゃいけない…。


……
……だからだ
(…怖いのは。)



うっ、と思わず涙が溢れてきた。
先輩に嫌われたかもしれないと今更思ったところで、もう後戻りなんかできないってのに。

それでもつらい。
嫌われるのがつらい。
無視されたらどうしようって思って怖くなる。
でも会えないのもつらい。
バスケできないのもつらい。

うーっ……
なんか色々つらいんだけど…!!




「ううっ…バスケしたいっ…」



ぐすっと鼻を啜りながら漏らした言葉に、聞こえるはずのないところから聞こえるはずのない声がした。




「…練習サボってる奴が言う台詞か、馬鹿黄瀬。」




不思議だ。
涙で視界は滲んでるはずなのに。
こんなにもハッキリとその姿を捉えることができるなんて。




「ーー…せんぱ、」
「ひっでぇ面。それでもモデルか?」
「な、なんで、」
「……だーから…意味わかんねーことでグダグダ悩んで挙句の果てには泣いちまってる馬鹿を迎えに来たんだろが。」




…本物だ。
この言葉遣いの悪さとか、上からガンガン物言うところとか、…本物の先輩だ。

えっ…なんで??!!!

っていうか『意味わかんねーこと』って言われた?!!




「おら、戻んぞ。」
「……、…先輩、オレがしたこと…怒ってんじゃないの?オレのことキライになったんじゃないの?」
「………。」




近付いてくる先輩と距離を取りながら聞くと、先輩の口がムッとへの字に変わった。
出来ればこんなこと自分から聞きたくなかったけど、『意味わかんねーこと』なんて言われたら。

先輩のことが好きって気持ちをそんなふうに言われて、あのことを無かったことにされるのは、
(…もっと嫌だ。)





「先輩あのこと流すつもり?無かったことにしたいの?」
「黄瀬、」
「…っ、オレは、本気で…あんたのことが好きなのに…っ」





今まで我慢して言えなかった本当の気持ちがどんどん溢れ出してくる。
怖いのに。嫌われたくないのに。

だけど、オレがそう叫んだことに対して先輩が何かを言うことはなかった。
ただ、予想に反してーーー

ボカッッ!!!!!!!

凄い強烈な蹴りをお見舞いされた。
どさっと道端に倒れ込むオレ。



「痛っ…てぇ〜…、何するんスか先輩っ!!!!」
「うるせー馬鹿!!さっきから敬語使うのも忘れやがって…調子乗んな!!!」
「え、ええっ?!!!(そこ?!!!)」




何だろう、オレが悪いかもしれないとは思うけど…この状況でこの流れって、それはさすがに先輩が間違ってると思うんだけど!!!

だって、告白して蹴られたってことだよ!それもう意味わかんねーよ!!

あまりに予想外のこの状況に言いたい言葉を上手く喉から出せずパクパクと口を開閉させるだけのオレを見下ろしながら、先輩は「ふー…」と呆れたように溜め息を吐いた。



「…ほんっと頭だけは悪いのな。」
「ひどっっ」
「……嫌いになるわけねーだろボケ。」
「…、…え…?」



言葉は乱暴のまま。
だけど、見上げると先輩の表情は今まで見たこともないものだった。

顔は怒ってる。
眉間にシワ寄ってるし。
でも、…首まで真っ赤だ…



「先輩…?」
「だからっ、とりあえず嫌いじゃねーっつってんだよ…!もういいだろ!おら早く行くぞっ」
「…それって…」



よくない。
もうよくないよ。
ちゃんと言ってくれないと、分からない。
だって…そんな可愛い顔で言われたら…期待してしまう。


立ち上がって、先輩の目の前まで寄って、今度はオレが先輩を見下ろした。じっと見つめながら。



「先輩、…オレ、先輩のことが好きなんだよ?」
「…、…っ、何回も言わなくても…わ、分かってるって言ってんだろ!」
「じゃあ嫌いじゃないって、どういう意味?ちゃんと言ってくれなきゃオレ分からないよ。」




先輩、なんでそんなに顔赤いの。
なんで慌ててるの。
……こんなん、期待しちゃうよどうしたって。




「せんぱ、ぃっ…痛ーーーーッ!!」
「お、俺だってなぁ…わかんねーに決まってんだろボケ!!!」
「(うっ…こ、今度は鳩尾…っ…)」
「お前にあんなことされるとか思ったこともねーしっ…だけど嫌とかじゃなくてっ…、考えても分かんねぇし…お前のせいでシュート全然入んねぇしっ…ドライブも森山なんかに止められちまうしっ…」
「せ、先輩、落ち着いて…(えっ…?シュート?ドライブ??)」
「…くそっ、……自分でもわかんねーんだよっ…」
「せんぱい…」




クリーンヒットした鳩尾が猛烈に痛い、のに、目の前で真っ赤になりながら必死にそんなこと言われたら、

……どうしよう
嬉しくて、やばい。


ハッキリした言葉は聞けそうにないけれど、それも先輩の性格だったら仕方ないのかもしれない。
焦って答えを急ぎたくなってしまったけど、多分先輩は先輩なりに色々考えてくれて、でも考えが纏まらないままオレを迎えにきてくれたんだ。

この人を今これ以上追い詰めることはしちゃいけないと思った。




「…ゴメン先輩、オレ戻るっス。」
「……おう、」
「迎えにきてくれて、ありがとう。」




笑って言えた言葉に、先輩もフンッと口角を上げた。
付け加えて言われた『あとでコートで扱きまくってやるから覚悟しとけよ』って台詞にはちょっと恐怖を感じたけど

久しぶりに先輩の隣に並んで歩けたことが嬉しくて
すごく、嬉しくて

この先どんなことがあってもオレはこの人のこと、多分ずっと、ずっと、大好きなんだろうなって確信してしまった。



今は無理でもきっといつか、
『嫌いじゃない』じゃなくて
『好き』って言ってもらえるように頑張るから



オレ、すっげー頑張るから
覚悟しててね、先輩?






〜END〜









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