謝らせたいのです





俺は今怒っている。
どのくらい怒っているのかというと、俺をこうさせた張本人に既に廻し蹴りをお見舞いしてやったくらいには、怒っている。




「まだケツいてーし。」
「……。」
「室ちんまだ怒ってんの?」
「…ああ。」
「びてー骨折れたかもってくらいの蹴り食らわしといてまだ怒ってんの?」





心狭くないー?と付け足しで言われて俺はアツシを睨み上げた。
怒りをおさめるアクションをとるどころか、怒りを蒸し返すような発言しかしてこない。

アツシは喧嘩を売る達人か?
(そして俺は売られた喧嘩は買う男だ。)





「だからー要らないから残してんのかと思って捨てただけじゃん。わざとじゃねーし。」
「わざとじゃなくても最後に食べようと残していたヒトの好物捨てといて一言も謝らないのはどうかと思う。」
「だってわざとじゃねーし。」



なんだそれは。
わざとじゃなかったら何をしても許されるとでも言いたいのか。

食べ物の怨みは恐ろしいって、アツシなら俺以上に理解できるだろうに。
(わざとじゃないと叫びながらまいう棒一本一本踏み潰してやろうか。)


……じゃなくて。

俺が怒っているのはそういうことじゃなくて。
つまり、何で"SORRY"と言えないのかということだ。

ただ一言、アツシがそう言ってくれれば「仕方ないな」で済ませたのに。

ここまでくるともう後に引けない。
アツシが謝らないなら俺も許さない。






「アツシのそういうところが嫌いだ。」
「………なにそれ。」
「言葉通りの意味だけど。」
「………、…………………………"きらい"。」




つい出てしまったWORDだった。
アツシはその言葉を己に理解させるように繰り返しているようだった。

(あ、やばい。)

そう直感した。
アツシの周りにさっきまではなかった刺すような空気が漂っていたからだ。
これは、とりあえず、アツシを怒らせたと思って間違いない。




「…ちょっと来て室ちん。」
「い、行かない。」
「いーから来てっつってんの。」
「っ、(うわっ…凄い力…っ)」




ぐいっと腕を掴まれて、ズンズン進むアツシに引き摺られてしまえばどんな抵抗も無駄だった。
パワーが桁違いだと改めて実感してしまう。

あっという間に食堂から無人の教室へと連れて来られてしまった。
とはいえ、ここは学校の中だ。
もしかしたら人が入ってくるかもしれない。
アツシもこんなところで事件なんか起こさないだろうし、万が一本気の喧嘩になった場合、喧嘩慣れしていないアツシに俺が負けるとも思ってなかった。



だけど、マズイ、と
心のどこかで思った。







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