賭けの行方、その後ストーリー(陽泉)
※このお話は
『赤降の今後について陽泉が本気で考えてみた』
『赤降メモリアル』
『バレンタイン小説:赤降』
『ホワイトデー小説:赤降』
などとリンクしております。
*******
陽泉高校、一年生寮。
"その時"は突然訪れた。
「――――…え?マジ…?」
『ああ、本当に可愛いかったよ。ホワイトデーというイベントも悪くないね。』
「(つーか全くおんなじことバレンタインでも言ってたし…。)」
ツッコむべきか、ツッコまないべきか…で後者を選んだ紫原であったが、黙ったままでいた理由はそれだけではない。
ここ数ヶ月、頭のどこかでずっと『例の賭け』を気にしていた。
それがいま、最も望んだ形で集結を迎えようとしているのだ。
感情をあまり表に出さない紫原だが、その分内側からフツフツと沸き上がる何かがあった。
『敦?聞いているのか?』
「…んー、…赤ちんのことだからまだ手ぇ出さないって思ってたんだけど。」
『いろいろ理由があってね。(理性が砕けたという。)』
「うん、でもまぁさすが赤ちんだよね。オレ信じてたし。」
『……一体何を信じてくれていたのかは分からないが…一応それは"おめでとう"という意味でいいのかい?』
優しい声色で問い掛けてくる赤司に紫原は「もちろん」と即答した。
その手は無意識にガッツポーズを決めている。
その後"光樹が、光樹が"と途方もなく長くなりそうな会話を(どう短く見積もっても3時間コースだろう)紫原独特の躱しテクニックでそこそこに終了させて、電話を切った。
ベッドの上でスマートフォンを握りしめながら、紫原はニヤリと静かに笑った。
まるで厳しい試合に逆転勝ちした時のような、身体の内側から沸き立つ感情を今度はハッキリと自覚していた。
「…赤ちんやっぱ最高だし。さっそく劉ちんに連絡して、そっから………」
独り言を呟く間も口元がどうしたって緩んでしまう。
それも今後のことを考えると仕方のないことであった。
そして、紫原から連絡を貰った劉もまた、同じようにガッツポーズを決め込んだことは言うまでもなく。
「私は赤司征十郎を信じてたアル。」、そう紫原とほぼ同じ台詞を口にし、一年生寮と二年生寮…離れた場所にいるはずの二人だったが、この時同時にほくそ笑んでいたという。
一方その頃、食堂にて偶然居合わせていた福井と岡村…そして氷室は。
(…あ、福井さん、アツシから至急部室に集まるようメールが来ました。)
(……ん?…オレも、いま劉から似たようなメール来たぞ。)
(………………。)
(……。)
(…………福井さん、)
(…なんだよ。)
(………逃げたほうがいいような気がするんですが。)
(…奇遇だな、オレもだ。)
(ちょっ、ワシだけ除け者か??!)
ひどくない?!と訴えかける岡村をよそに氷室と福井の顔色は一気に青くなってゆくのであった。
[ 90/217 ]
[*prev] [next#]
[戻る]