オニがくるよ(陽泉)







「寒い、まじ寒い、練習したくねーし。」
「寒い=練習したくねーし、の意味が解んねーよ!」
「福井さん、アツシは多分…着替えるのが嫌なんだと思います。」
「さすが"Mr.オカン"アルな、氷室。」



誰がオカンじゃ、という瞳を一瞬ちらつかせた室ちんだったけど、なんとかポーカーフェイスでやり過ごしてオレに視線を移した。

さっきの室ちんの言葉、「そうだろ?アツシ?」って聞いている顔をしている。

で、答えは合っている。
ただでさえ寒いのに何が悲しくて半袖にならなきゃいけねーの、って思うわけ。
後半になってきたらそりゃあキッツイ練習のせいで身体はすっかり温まるけど、…………ブレザー脱いでベスト脱いで………って、寒すぎてほんと御免だし。

そういう訳で、部室に集まった皆の前でオレだけまだ着替えていない状況だったりする。

あーもう寒い寒い、秋田まじ寒い。
東京帰りたいんだけど。
東京も寒いのだよ!とかミドチンは言うだろうけど、絶対秋田よかマシだと思うし。





「ほらアツシ、バスケしたらすぐ暑くなるって、な?」
「……。」
「なんなら俺が1on1付き合、」
「言うと思ったし!!」



室ちんの言葉にかぶせるように言い返すと「チッ」と舌打ちされてしまった。
チッ、じゃねーし。

オレ室ちんみたいにバスケ馬鹿じゃねーからバスケしてすぐ暑くなるとかねーし。
(そりゃ室ちんはすぐ"熱く"なるけどさ)






「まーどーでもいいけどな、あんまり駄々こねてっと鬼が来んぞ。」
「そろそろ来そうアル。」
「…来るじゃろな。」
「アツシ、本当に急がないとタイミング的にはもう――、」




室ちんが青い顔してオレにちらりと視線を寄越した、その時だった。
バンッッ!!!!!!と勢いよく扉が開いたかと思いきや、稲妻の如きスピードでそれはオレの後頭部目掛けて容赦なく降り下ろされた。



スパーーンッッ!!!!




「お前らいつまでふざけてる!!紫原、ぐだぐだしてないでさっさと着替えろ!!!紫原以外も罰として外周20だ!!!!」


「うげっっ!!!くそっアツシのせいで!!」
「監督厳しいのぅ…」
「…というか更衣室に躊躇いもなく入ってくるのは誰も突っ込まないアルか。まぁ今更アルが。」
「アツシ、大丈夫か?アツシ?」





………ねー…知ってる?
秋田にはさ、鬼(監督)がいるんだよ。
体罰問題うんぬんで敏感なご時世だってのに、生徒の頭に迷うことなく竹刀降りおとしちゃうような鬼がさ。


あ〜…なんか…室ちんの声が聞こえる気もするけど、衝撃が強すぎたからか一瞬気ィ失いそうになってコレもう返事も出来ねーんだけど。





「紫原!早く着替えろと言っただろう!貴様は外周30だ!」






皆がいなくなった部室でオレは思った。
ひたすら思った。
けっこーマジに思った。

とりあえず、
今度からは誰よりも早く着替えよう、と。












〜END〜





数日後、秀徳高校。




(う〜寒いっ!!…真ちゃんって着替えるの早いよなー…寒くねーの??)
(……高尾、お前…知らないのか…?)
(え、なに真ちゃんそのドン引き顔!(笑))
(……早く着替えないと、…おっ、鬼が来るのだよ…!!!!!)
(ちょっ、何言ってっか高尾ちゃんわかんない(笑))





(なぁ木村…もうマジで轢いていいか?)
(うん、いいんじゃねーかな。)
(よーし緑間、外周50な。)





********



なんだこれ。
まさこちんが書きたかっただけなのに(・∀・)


紫原に妙なこと吹き込まれて、まんま信じちゃう緑間くん。
仲良し陽泉&仲良し秀徳だいすきやー(・∀・)





[ 143/217 ]

[*prev] [next#]
[戻る]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -