リバティー!(万似)






「似蔵のケツに突っ込みたいでござる」
「…それ、冗談だよねぇ?」





リバティー!





「似蔵、何処に行くでござるか」
「ああちょいとそこまで」

「似蔵、手当てを」
「ああ頼むよ」

「似蔵、風呂が」
「ああ入るよ」

「似蔵、飯」
「ああわかった」

「似蔵、」
「ああうん」

「似蔵」
「うん?」

「にぞう」
「…」

似蔵似蔵似蔵似蔵

にぞう。

一体何だってゆうんだい、人の名前ばかり呼んでさ。
まるで気狂いの様だよ気付いているかい?

「似蔵、」
ああほらまた莫迦みたいに
「何だい?」

「…、風呂の支度が出来たそうでござったから」

うん。
で、
何だい?今の間は
「どうかしたの?」
「いや、その」
はっきりしなさいよ。
嫌だね最近の若者は濁し言葉ばかり覚えてくれて。
解りにくいったらありゃしない。
「い、一緒に、入っても良いでござるか」

「…ああ、良いんじゃない?」
何を其処までかしこまってゆう必要があったか。
男女の仲なら恥じらいこそ持てど、男同士に恥などないだろうに。
お手洗いがその良い例だね。





けれど事件はその風呂で起こったのである。



冒頭の台詞を口にした後、彼は僕を浴槽に沈めた。
沈めたとゆうのは文字通りで、躰を洗い終えた僕の首を掴んで浴槽に押し込んだのである。
突然の事にろくすっぽ息も吸えぬ儘為されるが儘だ。
揺らめきの中から万斉の姿は確認出来たので其処まで焦りはしなかったんだけども、
あろうことかその男はそのまま(湯の中で)接吻を強要したのだ!
強引に開かされた唇から空気が漏れ出て、次第に息苦しくなる。
試しに腕を伸ばしてみたが、果たしてその腕はどの方向に伸ばされたのか。
方向感覚が狂うな。
(万斉、万斉)
手探りで髪の毛の様なものを掴んで思いっ切り引っ張った。
「…っ痛!」
彼の首が後ろに仰け反り、
反動のように僕は浮上した。
「げほっ、げほ」
「大丈夫でござるかっ」
一体どの口が…!
何だいその焦った顔。
こうなる事は予想出来たろうに。
「げほ…、あー…」
「にぞう、」
細い目で万斉を見上げる。
するりと肘から肩に這い上がって来た彼の手に身を震わせた。
触り方がねちこい。
「な、に」
「お前が死んだら俺は抜け殻だ」
何の話だい、畜生め。
今先刻僕を浴槽に沈めたのは誰だ。
そんな悲壮な顔をして
今にも死にそうだよお前
万斉。





−−−
昔、某作家さんに触発されて書いた万似。
万斉は色々しつこそうだ…
2012.01.28


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