……眠い
もう春分の日ということもあり、外はぽかぽかとした陽気に包まれている。
こんな日にひなたぼっこしたら、気持ち良いだろうなあ。
だけど、私には休んでいる暇はない。
「じゃあこれ頼んだぞ」
目の前にどさりと積まれた書類を見て正直げっそりした。
どういう経緯があったのか、自分でもよく分からないが、今年に入ってから私は副長補佐に昇格してしまった。
別に昇格したことが嫌なわけじゃなくて、何が問題かというと、原因はこの人。
(あー、やっぱり煙草臭い)
私は煙草の臭いが苦手だ。もちろんみんな好きという事はないだろうけど、頭が痛くなるし。
副長は、仕事が出来るし強いし、おまけにあの容姿。尊敬するけど、どうしても鋭い視線故に近寄りがたく、おまけに煙草の臭いときた。
「……どうした?」
「いえ」
しばらく頭を押さえていると副長から声をかけられた。いけない、早く仕事終わらせなきゃ。鬼の副長と言われるくらいだし、気を抜いていられない。
「お前、最近顔色悪くないか?」
「え?」
作業を始めてから小一時間ほど過ぎた時、唐突にそう告げられた。
「というより、俺と仕事してる時……調子が悪そうな気がするんだが」
「……あー」
「なんだよ、はっきりしろ」
まさかこんなこと言えるわけがなく、しどろもどろになっていると副長から急かされる。
「煙草の臭いって……苦手、なんですよね」
「煙草?」
「あ、す、すみませ……別に嫌とかそういうんじゃないんですけど、」
「……悪ぃ」
副長は煙草の火を消して窓を開ける。悪いことしちゃったな……だけど風が気持ち良いことも事実。
「あと、何て言うか……肩の力抜けよ」
「?」
「お前の書く字は綺麗だし、そのうえ書類は分かりやすくまとまってるだろ」
「え、ふ、副長?」
突然の褒め言葉をいただき戸惑う。
「刀だってなかなか良い筋いってんだろ……俺が見込んで副長補佐にしたんだ」
「!」
う、嘘。全然知らなかった。副長はてっきり私なんかを補佐にされて、迷惑がってると思ってたのに……
「まーあれだ。そんなに気遣うな……仕事もやりにくいだろうが」意外な一面、見つけた「土方さん、お昼寝がしたいです」
「……おいおい」20110320
ある午後の出来事