初めは、憧れの忍。その憧れが少し特別な想いに変わるまでそう時間は掛からなかった。少しでも近付きたい、そう思って必死で修業をしたし、年下の私は自分を大人っぽく見せるために前髪は軽く流して。
彼は、上忍まで決死の努力ではい上がった私の事を認めてくれた。頑張ったね、そう言って優しく頭を撫でてくれた。




「はたけ上忍!」

「ん?」

「今日もかっこいいですね……!」

「はは、毎度照れるな」

いつもと同じように笑ってそう返してくれる。彼の笑顔を見れるのは嬉しいけど、同時に私は少し悲しくもあった。こういう時、一度も目を見てくれたことはなかったから。当然ながら彼は私の気持ちにも気付いているだろう。だから余計に辛かった。たまに、勇気を出そうと思った。だけど、いざ口を開こうとしたら彼の手が頭に乗る。結局自分の気持ちは言えず仕舞いに終わるの。私の事嫌いなのかな。それならもっと冷たく突き放してくれたらいいのに。

「じゃあね、明日も任務でしょ?」

「ま…待って、下さい!」

そのまま立ち去ろうとしたはたけ上忍は、私の声に足を止めた。
咄嗟に呼び止めてしまった私は、急いで話題を探す。

「あーごめん……ちょっと今、忙しいから」

「! す、すみませ……失礼します」

私ったら馬鹿だ。この人ほどのエリートなら、上忍なりたての私なんかよりずっとずっと忙しいに決まっている。
少し落ち込み気味にその場を後にした。





「……今日もいないなあ」

待機所ではあ、とため息をつく。
ここのところ、はたけ上忍の姿を見ていない。珍しく早いのかなあ、と思い今日はいつもより早起きをしたのだが、それでも会えなかった。

「あら、早いのね」

「あ、紅上忍…あの、最近はたけ上忍は……?」

彼女は、私のはたけ上忍への想いを知っている数少ない一人だ。

「あら、知らない?確かカカシは、今日には出発でしょ」

「え?」


出発?
その言葉になんだか嫌な予感がする。


「ええ、長期任務で。まさかそれも聞いてない……?」

「知らないっ……!そんなこと……」

頭が真っ白になった。いつも一緒に居たのに、そんなこと一言も教えてもらわなかった。いや、当然なのかもしれない、私なんてやっぱり迷惑がられていたんだ。

「今なら間に合うから、行きなさい!」

「でも」

「良いから!次いつ会えるか分からないのよ!」

「……!あ、ありがとうございます!」

彼女の言葉に背中を押され、慌ててそこを飛び出す。次いつ会えるか分からない?どのくらいの期間かも分からないのだろうか。頭がぐちゃぐちゃのまま、とにかく私は走った。






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