「はぁ、はぁっ……はたけ上忍!!」
「……!?」
阿吽の門までの途中の道で彼の銀髪が日に照らされて光った。まさか私が来るとは思っていなかったのだろう、目は大きく見開いている。
(追いつい、た……)
「誰かに聞いた?わざわざこんな…「はたけ上忍が好きです」
「!」
突然のカミングアウト(とは言っても気付いていただろうけど)に彼が言葉を失う。
必死に走った後で、髪の毛はぼさぼさだし顔もぐちゃぐちゃ。さぞ醜く見えることだろう。
だけどだけど、時間がない。
「分かってます、私なんか……迷惑な存在だってことくらい。でも、そんな、はたけ上忍が長期任務でいつ帰ってくるかも分からないなんて…怪我だってするかもしれない。ずっと会えないなんて、そんなの絶対に「……ちょっと良い?」
「……?」
話しているうちに目に涙まで浮かんできた。彼の言葉に顔を上げる。
「いつ帰ってくるか分からないって言った?
……俺の任務は三日間の予定なんだけど」
「……え?だ、だけど紅上忍が!」
そう言うと、はたけ上忍ははぁ……とため息をついた。何やらぶつぶつと呟いている。
「それ、嘘」
「えぇ!?」
その言葉に、へなへなと力が抜ける。なんだ、そうなんだ……だとしたら、どうして彼女は嘘の情報を……?
「……!」
気付いたら、視界が真っ黒になっていた。それと同時に、はたけ上忍の匂いで埋め尽くされる。え、もしや、これって、
「は、はたけ上忍……?」
抱きしめられ、てる?
「なんで俺が、いつもあんな態度とってるか分かる?」
そんなこと分からないし、むしろ疑問だ。
「大切にしすぎて、傷付けるのが怖かった」
「……!」
その言葉にまさか、という思いで耳を疑う。だけど目の前にいて私を抱きしめる彼は、確かに本物で。
「私……」
ぽろっと涙を零すと、優しい指でそれを拭ってくれた。
「絶対お前だけは泣かせないって決めてたのに、ごめんな」
「うぅ…カカシ上忍の馬鹿ぁ!」
ぎゅーっと抱き着くと、さらに力強く抱き返してくれた。
「上忍がどんな危ない任務をしないといけないか、分かってる…そういうことも全部引っくるめて、好…「黙って」
「……!」
唇に柔らかいものを押し当てられて、それ以上話せなくなった。
「ちょっとは俺に言わせてくれない?
好きだ」
(夢、みたい)
目の前にカカシ上忍がいて、抱きしめ合って、キスもして。
「もしかして、紅上忍……」
「あぁ、やられたね」
恥ずかしかったけど、彼女には感謝。目を閉じて彼の温もりをじっくり感じる。
「最近会いませんでしたね」
「……ごめんって」
忍の世界、そこで失う物は多い。だからこそ、大切な人との時間を大切にしたいんだ。最初から距離を置くなんて、絶対に嫌。だから離さないでね。
好き!大好き!たった三日間、されど三日間。彼が元気に帰ってきたら、この声を届けよう。
20110419
素敵企画様
xxxに提出。
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