ドキドキ、ドキドキ。校長の話を聞いている今、心臓がせわしなく音を立てている。
この学校のクラス替えは、教室掲示じゃなくて集会で一斉にプリントが配られる、という少し味気ないものだ。


「進級した皆さんは、……」


(話なんてもう良いから、早くして!)


壇上で話している先生には少し申し訳ないけど、終業式の終わりに待ち構えているクラス替えが気になって仕方がない。知るのが怖い、というのもあるんだけど。


(……!終わった……)


新任の先生の紹介も、長い校長の話も終わった今、残すものはあと一つ。


「じゃあ学級委員はプリント取りに来いよー」


旧クラスの学級委員が運命のプリントを取りに行く。一番に見れるなんてずるい。
周りが新クラスを確認し、きゃーきゃー叫ぶ中、まずはその人の名を探す。そして、その下に自分の名前は……










「ショック……ショックすぎる……隣なのに……!!」

「おまけに俺はお前のクラスの数学を教えないみたいだな」


去年と同じように数学準備室に勝手に入り、サスケに話しかける。
高一の時に担任だったうちはサスケ先生。当時恋をして、それはそれは色んなことがあったけれど、ついにそれは実を結んで。去年は担任じゃなくなっちゃったから、今年こそは……と思っていたのに。まさかの隣のクラス。(ちなみに担任は熱血指導で有名なガイ先生だった)


「最後のチャンスだったのに〜!!サスケー!!」

「学校では呼び捨てはやめ……ておい、な、泣くなよ」

「だって……」


最後の年なのに。それに、サスケは女の子達に人気だから、あたしよりもっと美人な子がいたら……そう考えただけで気が滅入る。


ぐずぐず泣き止めずにいたら、くいっと顔を上げられた。


「今年は特別に、休みの日はつきっきりで勉強教えてやるよ」

「……デートが良い」

「馬鹿、受験だろ」

「じゃあずっと一緒にいるもん」


泣き顔のまま笑ってそう言うと、サスケの顔が近付いて来て唇に柔らかい感触。


「……ん、」


ちゅっと音を立ててすぐに離れたのがもどかしい。


「ん、足りない」

「ガキが生意気なこと言ってんじゃねえよ」

「そんな……!!っは……」


そんな事を言いつつも、なんやかんやで今度は深い口づけをされる。

いよいよ頭がぼーっとしてきたとき、ゆっくりと唇が離れた。サスケの濡れた唇がたまらなく色っぽい。



「卒業したら、続きしてやるよ」

「!」


途端に顔がぼっと赤くなったことは言うまでもない。

窓の外では、ハートの形をした花びらがひらひらと踊っていた。




桜の約束


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