01
「葵の家も花屋だなんて、初めて知ったわよ!もっと話しておけば良かった」
「まー分かったから……本件の方も分かったな?」
「もっちろん!合言葉かあ、なるほどね!
それにしても葵にぴったりの花よねー」
「まあ、そりゃ誕生花だからな」
「そういうことじゃないわよ!」
いのが一旦奥の部屋に引っ込み、薄い本を片手にすぐ戻ってきた。表紙には『誕生花・花言葉』と書かれている。
「6月27日……あった。
ほら、これこれ」
指さされたそこを見ると、濃いオレンジ色のくっきりした六弁花の花。これが姫百合らしい。
「花の様子が可憐だから姫百合っていう名前なんですって。
それにしても、葵は花言葉も知ってるのかしらね?」
「花言葉?そういうことは特には……」
下に記されている花言葉を見る。
「……そうだな」
あいつにぴったりじゃねえか。
「……あ、雨降ってきた。シカマル傘持って来た?」
「ああ……梅雨だからな」
顔を上げ外に目をやると、空は薄暗く水滴が窓を濡らしていた。
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