05
「私の家ね、花屋なの」
頬を掠める風を心地良く感じながら、話す。
「花屋?じゃあいのと一緒か」
「うん、けどね、私はあんまり花に興味なくてさ、花の事とか分かんないんだよね……
それに、私には夢があって」
「夢?」
「うん……小学校の先生になりたいの」
「アカデミーみたいな感じ?」
「そう!
教えることが好きだし、子供も好きだし……勉強だけじゃなくて、楽しい事をいっぱい教えてあげたい。
両親はね、私のしたいようにすれば良いなんて言っててさ……甘やかしすぎだよね。恵まれてるなあ。
幸い妹はお花が大好きで、喜んで手伝いとかしてるし、跡継ぐって言ってるんだよね」
「優しいご両親だね」
「でしょ?」
風が、頬に流れた涙をさらっていく。
それを拭おうとはせずに、目を閉じた。
「みんな、元気かなあ……」
泣き笑いをしながら、呟く。
分かってる。もう戻れないということ。
カカシさんは、どういう意味か分かるだろう。
私の夢は、もう――
「ありがとね、話してくれて」
(違う……)
悲しいから?寂しいから?
きっと違う。
私が、「私」のことをもっと知ってほしかったから、話したのかもしれない。
……ずるい。私はずるい。
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