06
「シカマル、手退けて」
半ば無理やり傷口をかばうシカマルの手を払う。そこに自分の掌をそっと翳すと、ぼうっと温かい光のようなものが出てきた。みるみるうちに傷が塞がっていく。
「!馬鹿っお前ただでさえチャクラが足りてねぇのに……!!」
「っはぁっ…けど、ほら、治った」
そう言って笑いかけると、思いっきり睨まれた。
「そんな、怒らないでよ……それに、医療忍術思い出せたし…」
「ふらふらじゃねえか……」
確かにさっきよりもさらに力が入らない。再びシカマルにもたれかかり、そっと目を閉じる。
「いいの……自分が許せなかっただけ。怪我させたく、なかったから」
「葵……」
「そんな顔しないでよ、キバ。消えるわけじゃないんだから」
弱弱しい声にうっすらと目を開けてそう言って笑うと、キバの顔が強張った。それと同時に、ぎゅっと抱きつかれる。
「え、キバ?」
「俺は……嫌だ……!!もう、どこにも行かないでくれよな……」
一体何の事を言っているのか分からなかったけど、その訴えるような声に一瞬返す言葉が見つからなかった。
「私は、どこにも行かないよ、キバ」
「……約束だぜ」
「ん、分かった」
「! 今、五代目に伝えたぜ」
シカマルが影分身を使って、さっきの出来事を報告してくれたのだ。
「俺の予想じゃ、任務が終わり次第カカシさんもすっ飛んで帰ってくると思うけど……今日何時頃帰って来るんだ?」
「確か、早く終わらせて夕方には帰るって言ってたから……もうすぐ帰って来るんじゃない?」
「そうか。じゃあ、今度こそベッドで寝て来い。だいぶ体は楽になったか?まあ今の医療忍術で若干無駄遣いしただろうが」
(……まだ怒ってる)
だけど、それでも幾分か体が軽くなった気がする。なんでだろう、ずっとここにいただけなんだけどな。
「キバ、行くぞ。葵は休まねえといけないんだ」
「……おう」
やっとキバが私の体から離れた。
「葵、晴れてたらこれからも外でチャクラ回復させろよ。その方が早いから」
「……?分かった」
「じゃあな」
シカマルとキバを見送ってから、私は家の中へと入りベッドにダイブする。色々と考える前にどっと疲れが押し寄せてきて、私はそのまま眠った。
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