01
シュンッ
「あっ……!!やっと当たった!」
はあはあと息を弾ませながら、隣に立つカカシさんを見上げる。
「道具を扱うのが苦手なのは相変わらずだけど……最低限、走りながら標的は狙えるようにしないとネ」
(ま、まじか)
基本球技が苦手な私に、走りながら手裏剣を命中させるなんて可能なのだろうか。
今は手裏剣の使い方の訓練真っ最中。思っていたより私の手裏剣捌きが下手だったのか、カカシさんが少し呆れていた。
「じゃあ、俺は任務あるからそろそろ行くからね。帰るときは寄り道せずに真っ直ぐ帰って来ること」
「ん、分かった!」
「あ、葵」
新たに手裏剣を握り、狙いを定める私にカカシさんが一言。
「今の葵には足りないものがある。
それを克服出来ないと、たとえ投げられるようになっても……使えないよ」
「えっ?」
何やら謎な台詞を残して、カカシさんは行ってしまった。
足りないものなんて、今の私にはありすぎて分からない。技術的なものじゃないのかなあ……
しばらく経って、手裏剣を投げ疲れた私は大きめの木にもたれ掛かった。
「はー……疲れた」
体力使うなー、まあ太らないからいいけど。
目を閉じていると、この前の出来事が脳裏に蘇って来た。
(カカシさんと、キ…キス、しちゃったんだよね!?)
あの後は、何故か二人とも妙に落ち着いていて、普通にいつもどおりに寝たんだっけ。あ、だけど「ごめん」とは言われた気がする。自分が何て返したかが思い出せない。……頭真っ白だったしなあ。
おかげで私はカカシさんと話すたびに緊張している。さっきみたいに修業してる時ならまだしも、ご飯食べてるときとか。家で何もしてないときとか。寝る前、とか。
「ファーストキスだったんだけど、なぁ……ああ何やってんだろう自分…」
カカシさんは、こういうの慣れてそう。こんなに悩んでる自分が馬鹿なのかな。そう思うと少し胸が痛い。
おまけに最近、カカシさんのこと意識してるような気がする。私だって恋したことがないわけじゃないし……
「けど、さすがに年齢差ありすぎ……!?いや、関係ない…のかな…ていうか好きって決まったわけじゃないし」
「葵じゃねえか」
「はははい!?あ、シカマル!」
「すげー反応……てかお前百面相してたぜ」
「……」
タイミングが悪い。
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