07
「私、どうしたら良いか分からなくて」
「……うん」
「カカシさんや綱手様、シカマルだって私にこんなに良くしてくれる。
なのに、私は一つも返せない」
「カカシさんだって本当は任務があるのに、私のせいでそれも休んで」
「……」
「勝手に自分で考えて、人のことも信じられなくて、そのくせ……寂しくて、」
「葵」
「みんなに甘えちゃって良いのかなって思ったり、私は……本当に此処に居ても良「葵」
遮られて、顔を見ると私を安心させるように笑って、だけど目はとても哀しそうで。カカシさんのこんな顔、何回か見たことある。それをさせているのは、他でもない私。
「……っ」
自分の遣る瀬無い気持ちに、堪え切れずに涙がぽろりとこぼれた。カカシさんはそれを指先で拭ってくれた。
「あ……ごめんなさ、!」
体にカカシさんの手が回ってきて、所謂肩を抱き寄せられているような体制。
「もうそれ以上言わないで」
耳元で低く聞こえる声はいつもと少し雰囲気が違う。
「葵は、葵だから自分を認めてあげて。自分を責めなくて良いんだよ」
「……!」
その言葉に、とうとう涙は止まらなくなって。泣き続ける私にカカシさんは黙って頭を撫でてくれた。
「……それ、お母さんみたい」
「お母さん?」
「うん……思い出す」
安心する。泣いてるのに、温かい。
「ずっと悩んでたんでしょ」
「……」
「言ってくれて、ありがとうね。それに、すぐに助けてあげられなくてごめんね、辛かったでしょ」
「!そんな、違う、謝らなきゃいけないのは私だから」
そう言うと、カカシさんは困ったように笑って、「じゃあお互いさまネ」と言った。
(言えた……)
言ってしまえば、なんてことない。不思議なことに、一線を越えたら怖くなくなった。
ほっとしたからか、急速に眠気が襲ってきた。いまだカカシさんの腕の中にいることも忘れ、意識が薄くなっていく。あぁ、まだ他にも言いたいことが色々あったのに、眠い。
「あり、がと……カカシさん」
「前も言ったけど、別に「さん」つけなくても良いのに」
「……年上に、呼び捨てなんて、出来ません……」
最後に何とかそれだけ言いきると、カカシさんがおかしそうに笑ったのが分かった。それを最後に私は眠りについた。
20110305
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