04
「私、向こうの世界に家族や友達、大切な人がいた。みんなすっごく大好きだったの。
だから……ここのことを思い出したら、それが薄くなっちゃうんじゃないかとか、忘れちゃうんじゃないかとか……それが怖くて」
根拠もない不安。だけど根拠がないものほど不安は大きくなる。
しばらくシカマルは考えていたけれど、やがて答えてくれた。
「あんまり俺もよく分かんねえけど……それって多分、葵がどう思うかって事じゃねえの?
お前が忘れたくないんなら、仮にこっちのことを思い出しても忘れないろうし、その人たちだってずっと大事なのは変わらないだろ」
「……そうだけど」
この世界に来てからの一番の不安は、知らないことだらけなことと同時に大切な人達と離れ離れなこと。
「じゃあ、カカシさんはどうだ?」
「え?」
話の繋がりが分からずに思わず聞き返す。
「だって、お前は今あの人の家にいるんだよな?おかしいと思わないか?里の他の誰でもなく、あそこなんだぜ」
……確かに一理ある。しかも、私が着れるような服もあったし、今思ったらベッドだって二人分寝れる広さだったし。
「お前がさっき言ったようなことも全部、あの人に打ち明けてみろよ。カカシさんだってきっとそれを待ってるんじゃねえの?」
「そう……なのかな」
その時、シカマルが微かに眉間にしわを寄せた。そしてはあ、とため息をつき、少し声を大きな声で私に聞く。
「お前はカカシさんのことどう思ってんの?」
「カカシさんは……優しくて、男の人なのに料理が上手で、多分強い人……?」
「あー、そうじゃなくて、お前自身がどう思ってんのかってことな」
(私自身が?)
正直言って、あんまり掴めない人だとは思う。だけど、
「なんかね……一緒にいると安心はする、かな。それに、初めて見た時も、なんとなく知ってるみたいな、変な感じがした」
混乱しながらも、一目彼を見たときになぜか直感的に感じた、と。
それを聞いてシカマルはそうか、と答えた。
そもそも、私とカカシさんってどんな関係なんだろ?
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