02
シカマルという人は、任務で図書館にいるらしい。ある部屋までたどり着いた時に、カカシさんがドアをノックする。しばらくしてがちゃりと扉が開き、黒い髪の毛を頭の上でしばっている男の子が顔を出した。
「はい……って、カカシさん?何の用スか。それにその子は……?」
「急にごめーんね。ちょっと急用でさ」
カカシさんが、周りを警戒しながら私のフードをほんの少しだけ上げて見せた。
「……!?」
その途端、驚愕に染まるその顔。なんとなく、居心地が悪い。
「……どうぞ」
そのまま私たちは部屋の中へ招かれた。
「いやあ、最初に会うのをお前にしておいて良かったよ。女の子たちはもちろん、ナルトやキバなんかじゃ大騒ぎになりかねないからね」
呑気に言うカカシさんに、若干苛立った様子の彼。
「そんなことより……どういうことっスか?一体いつの間に……」
「ほんの数日前」
「……葵、なのか」
「え……と」
いきなり矛先を向けられて、なんと答えたら良いのか分からなかったので思わず俯く。この人はカカシさんが言っていた通り、確かに頭が良さそう。
「葵、この子が奈良シカマルね。シカマル、今葵は記憶がない」
「「!!」」
その言葉に衝撃が走ったのは彼だけではない。私も、覚悟はしていたけれど……真正面からあらためて言われても、やっぱりにわかには信じられない。
「俺も色々考えたけど、本人には言った方が良いと思ったし、どっちにしろすぐ気付くと思ったから。
それに、木の葉の仲間はそんなこと気にしないと思ったからね」
カカシさんが片方の目を弓形にして私に笑う。それはなぜか私を安心させた。
「ま!年が近い者同士、積もる話もあるでしょうから、なんか適当に話しててちょうだい。俺はちょっと調べ物あるから」
「……へ」
「え、カカシさん?」
無理な事を言って、カカシさんは出ていってしまった。
残るのは、気まずい沈黙。
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