05
「本当にありがとうございました」
「どういたしまして。また是非来て下さい、次は生徒と会ってやって下さいね」
「……はい!」
イルカさんの人の良さそうな笑顔に、罪悪感を感じた。
でも、今から作戦開始だ。
「あ、待ってカカシさん」
「ん?」
「イルカさん、お手洗いお借りしても……?」
「ああ、こっちです」
「カカシさん、ちょっと待っててね!」
「はいよ」
カカシさんがイチャパラを出したのをしっかり確認してから、イルカさんに案内してもらう。
「あ、あの奥の扉ですね」
「はい」
イルカさんが廊下を戻ったのを見届ける。
横には入口のある一階に通じる階段。
……今しかない。
「あんまり葵を誘惑しないでほしいな」
「誘惑!?してませんよっ……ていうかそんな本ばっかり読んで、嫌われません?」
「嫌われるだなんて失敬な……」
「まあ、ありえないんでしょうけど」
「まーね」
「……」
「カカシさん、イルカさん、ごめんね……今日は本当に楽しかった。
カカシさん……今までありがとう。最後まで迷惑かけっぱなしでごめんなさい」
アカデミーに向かってそう挨拶し、頭を下げる。
そして気配を消し、そこから姿を消した。
決めたんだ。行かなきゃ。
もうここにはいられなくなるはず。
「ねえ、遅くない?」
「……確かに遅いですね」
コンコン
「葵さーん?」
「……」
嫌な予感がする。
バンッ!
「な、何してるんですか……!!」
「……いない」
「え!?」
がらんとした廊下に言葉もなく立ち尽くす。とっくに葵の気配は感じない。
くそっ……
どこ行った、葵…!!!
20110420
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