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「氷隠れの里?」
「あぁそうだ。今ではもうなくなったも同然の里だがな。
カカシはそこに、ある極秘任務で向かったんだ」

それは、誰も知らない物語。



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「それじゃ、オレはこれで失礼しますよ」
「おいカカシ!」
「……っ」


途方に暮れて、足早に部屋を出るカカシの後を追うことすら出来なかった。

誰って、何?どういうこと?
私のことを忘れてしまったということなのか。
でも、何で、私のことだけ忘れているんだろう。
約束、したのに。
きっと、ここに戻ってくると。


「綱手様……教えてもらえますか?カカシの、任務の内容」
「……藍」


いくら仲の良い友人であろうと恋仲であろうと、任務内容は基本的に極秘。
でも、今回ばかりは。今回だけは。


「……良いだろう。誰にも口外するな」
「もちろんです」


そこで冒頭に至る。




「なくなったも同然って……どういうこと、ですか」
「正確には、妙な事件があってな」


今では場所すら残されていない、まさに名ばかり辛うじて残っていたという氷隠れの里。
その里には、何か強力な特殊な薬があったとのこと。
しかし危険なもののため、それを始末することが必要とされていた。
今回カカシが向かった理由が、それだったらしい。

「その薬品を所持しているものがいることが分かってな、カカシは出向いたんだよ」
「なんていうか、すごい曖昧な内容なんですね」

私が言うと、火影様は少し表情を曇らせた。

「危険度も分からない、ある意味恐ろしい任務だな」
「じゃあ、カカシがあんな風になってしまったのも、もしかしたら…」
「おそらく、何らかの影響を受けたのだろう」

それなら、どうにかその原因を突き止めれば、カカシを元に戻す方法があるはず。

「火影様、この件、私任せては下さいませんか」
「お前はそう言うと思ったよ」

若干諦め口調の綱手様は、予想していたらしい。

「くれぐれも無茶だけはするなよ」
「了解しました」

頭を下げる。
ああ、今回は無理するしかないだろう。
そう心のなかで呟きながら。


20120521








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