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カカシ先輩の様子が、おかしいんです。





眉を下げながら、困惑した表情で私にそう教えてくれたのは、カカシの暗部時代の後輩の男の子だった。

おかしいとは、具体的にどういうことなのだろうか。
それより、あの人は任務から帰ってきてたの?何も聞いてない、何も知らない。いつもなら、真っ先に会いに来てくれるのに。それどころか、報告書そっちのけで来ようとするもんだから、よく私が怒ったんだ。

など、言いたいことは色々あったのだけれど、まずは会いにいかなきゃ。そう思い、カカシが今いるという火影様の元へと私は急いだ。

胸を過る嫌な予感を追い払う様に、スピードを上げながら。
なぜなら、私の嫌な予感はよく当たるからだ。


01.Blanks of the memory











「カカシ、お前一体……何が、あった」
「何って、オレは里を守るために任務を遂行しただけですよ。普段通りに」
















「火影様…!失礼します」
「!藍か…」

少々失礼な入り方だとは思ったが、こちらも気が気でなかったので扉をばたんと開ける。そこにいたのは、こちらを向いて座っている五代目様と、その向かい側に立っている……すなわち私に背を向けた状態の、約3ヶ月ぶりに見るカカシがいた。

この時点で、変だ。仮に私じゃなくても、突然火影様の部屋に誰か入ってきたら、振り返って確認くらいするものじゃないんだろうか。まるで無関心なカカシに、思わず眉を潜める。


「カカシ、お前…藍にまだ会っていなかったのか?」
「……」

カカシは何も答えなかった。

「……あの、綱手様、申し訳ございません、ばたばた入ってしまって…私も様子が気になって…」

火影様は私の気持ちを汲んで下さったのか、何も言わなかった。というよりも、彼のこの対応には、どうやら彼女も困ってしまっているらしい。

「カカシ、いつ帰ってたの…?」

横まで歩み寄り、カカシの目を見てぞっとした。




一言で言えば、そう、
光が、ない。





「ね…、どう、しちゃったの?」
「……カカシ、いい加減にろ」

見かねた綱手様も口を出す。
次に聞こえてきた言葉に、心臓が止まりそうになった。








「お前誰?」









彼は、光のなくなった冷たい瞳を、確かに私に向けて…そう告げた。




「約束するよ。オレは、お前のところに必ず帰るから。心配しなーいの」



何も聞こえない。色がない。まるでモノクロの世界だ。
数ヶ月前に聞いた彼の言葉が、頭のなかで浮いては消えた。


20120322








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