ほんの軽い気持ちから始まったことだった。

「……最低」

そう言い残して去って行った彼女に、少し胸がちくりとした。悪いのは自分、魅力的に見えた別の女の子に手を出してしまった自分。名前には悪いと思ったが、正直この時はやっと解放された、そう感じた。それが今から約6年前の話。長かった学生生活も終わり、今ではお互い社会で働く身だ。
情けない事に、当時名前との別れの原因となった女との関係は既に終わっていた。それほど気に病んではいなかったが。
だがそれは、自ら離してしまった女の子への気持ちが断ち切れていない証拠でもあった。

「……あれ、シカマルじゃない」

仕事も終わり駅に向かう途中、誰かに声をかけられた。

「……カカシ先生。それに、名前……?」

久しぶりに見た名前の姿に胸が変に高鳴る。しかし、同時に浮かんだのはある主の諦めにも似た感情だった。
高校時代に彼の生徒だったオレと名前。
ぴったりと寄り添うように歩いていた二人の様子を見て、直感した。

「……あ、ここで会ったし報告しておこうか?」
「え、ちょ、カカシ先生」
「恥ずかしがらなくてもいーの」

それに、もう先生じゃないでしょ。結婚してからも呼び続ける気?

「結婚……スか」

それは自然と、驚きから発した言葉だった。

「いきなりだから驚いただろうけど。今度改めてみんなには報告するつもりだったの」

みんな、というのはおそらく高校時代の同級生だ。

「……お幸せに」
「ありがとね。じゃ、オレ達行くから」
「じゃあね、シカマル」
「……おう」

こんな時間から二人でどこかへ行くなんて、ホテルかどちらかの家か、それしかない。その後の行為も。

「……っ」

幸せそう、な顔をしていた。
分かっていた、自ら手放したのだから。間違っていなかった、はずなのに。

「情けねぇな……」

消えない後悔に、今日だけは敵う気がしなかった。


20111010

蓮さま

リクエストありがとうございました!そして大変お待たせしました。
シカマル→悲ヒロイン→幸 ということで、さらにシカマル浮気設定。基本悲恋を書く機会が少ない私には良いきっかけになりました(^^)
シカマル病むくらい後悔設定だったので、情けない男になってもらいました(笑)
最後の「今日だけは」には、社会人になって今では過去の話、もう明日からは再び働かなくてはならない。だからせめて今日だけは…という意味が込められています。
ありがとうございました!



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