06.ショートケーキ
……私とした事が。どうして、どうしてやってしまったんだろう。
土曜日の今日、珍しく部活もなく暇だった。そんな時に雑誌の一ページに目を向けると、そこには美味しそうなスイーツ特集が。
ちょうど時間もあるし作ってみよう、そうだトシにあげよう!思い立って行動したは良いものの、……トシってこんなに甘いものは苦手だった気がする。
そう気付いたのは、トシが家に着いた直後の事だった。
「トシごめん……ほんとにごめん!わざとじゃなかったの、お願い許して」
「な……なんだよいきなり」
玄関に入るなり泣きついた私にトシは目を丸くしていた。
「トシが甘いもの苦手な事に気付かずに、苺のケーキ…作っちゃった」
「これ、か?」
白いクリームの上に苺の乗ったそれを見て、トシが聞く。
「うん。いいよもうマヨまみれにして……あ、食べたくないか………て、え?」
トシが、生クリームのついた苺をパクっと食べた。ついでに横においてあったフォークでケーキ本体も。
「む、無理しなくて」
「うめーよ、名前が作った物ならなんでもな」
「け、けど……!」
「店の物ほど甘くねーしな。信用出来ないか?」
「だって……」
トシは優しいから……。そう思っていると、くいっと顎を持ち上げられた。
「、!?」
突然触れた唇と、入り込んできた生暖かい舌。クリームの甘さや苺の甘酸っぱさが口に伝わってくる。ひとしきり咥内をなめ回されてからゆっくりと離れる。
「な?美味いだろ」
「……馬鹿」
それはケーキよりもずっと((嘘つき、……甘すぎるくらいだったよ))20110522
prev//
next ←