07.ネクタイ
彼は毎晩帰って来るのが遅かった。頭がキレる上に信頼性も厚いので、忙しいのも当たり前かもしれない。
私は晩御飯を作ってテーブルについて、彼を待っている間にいつの間にか寝てしまう。そして朝気が付くとベッドに移動していて、隣に彼の姿は既にない。その繰り返し。そしてもちろん、今日も。
ついているだけのバラエティ番組を眺めていると、突然玄関からガチャリという音が聞こえた。時計を見るとまだ9時過ぎ。まさか。
「名前」
「シカ、マル……?」
部屋に入って来た彼を呆然と眺めていると、苦笑いされ流れのままにスーツを渡された。スーツ姿を見るのさえ久しぶりで、胸の奥がきゅんとする。
「早かったね」
「あぁ」
お前に会いたくて、帰ってきた。
その言葉に目をぱちぱちさせる。気付いたら私はシカマルの腕の中にいた。
「ごめんな」
「……っ」
涙がじんわりと溢れる。そんな、シカマルは毎日仕事頑張ってるんだもんとか、お疲れ様とか、言いたいことはたくさんあったけど上手く言葉に出来ない。そんな私に、シカマルは分かってる、とでも言うようにただ頭を撫でてくれた。
涙に濡れるネクタイ
((朝まで離れたくない、本気でそう思った))
20110601
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