03
「じゃあ何故、昨夜は来なかった?」
イタチのお父さんであるフガクさんの声が聞こえる。
「高みに近づくため…」
「…何の話だ?」
イタチがクナイを取り出し、近くの壁に描かれているうちは一族の家紋に向かって刺した。
「俺の器は、この下らぬ一族に絶望している。
一族などと、ちっぽけな物に執着するから本当に大切なものを見失う…本当の変化とは規制や制約、予感や想像の枠に収まりきっていては出来ない」
「傲慢な事を…!もういい!!それ以上下らぬ戯言を言うなら牢につなぐ!!さぁ、どうするんだ!」
(駄目!!)
「隊長!拘束の命令を!!」
「兄さん!」
「イタチ!」
これ以上見ていられなくなって大声で叫ぶと、私と同時にサスケも叫んでいた。その私たちの声に、イタチはびくっとして動きを止めた。そしてゆっくりと地面に膝をついた。
「シスイを殺したのは俺じゃない……けれど数々の失言は謝ります。申し訳ありません」
(そんな…イタチ……)
深く深く頭を下げるイタチを見て、胸が詰まった。
「…三木の子か」
「!」
まさかここで私に矛先が向くとは思ってもいなかったため、サスケも不安そうに私の顔を見つめた。
「そう怖がるな……何もしない」
フガクさんはふっと顔をそらした。だけど私はなんだかこれ以上この場にいてはいけないような気がして、サスケにこっそり囁いた。
「ごめん……帰るね」
「葵……」
身を縮めるようにして、その場を足早に立ち去る。イタチが少しこちらを見たような気がしたけれど、目を合わせられなかった。
20110528
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