05

「……んっ…は、」

ゆっくりと唇が離れて、呆然と先生を見上げる。
何、何?何、今の。え、え……キ、キス、され……

「っぷぷ……何て顔してんの」
「へ、だ、だって、今……」
「キス?」
「―――!!!」

いざ言葉にして言われると、より現実味が増して今更ながら顔に熱が集中した。

「どう、して……」
「決まってるじゃない」

さっきとは違って、真正面からぎゅうって抱きしめられてる。



「好きだよ」


(……う、)

「嘘だ絶対嘘に決まってる!」
「……何でそうなるの」
「だってカカシ先生っ……私のこと子ども扱いばっかりして……絶対、そんな目で見てないし……」

そう言うと、先生がはあとため息をついた。見上げると、また素顔の先生が目に入り、なんとなく恥ずかしくなって目をそらした。

(普通に、かっこいい……ていうか綺麗)

「お前のこと、ガキだなんて見たことなーいよ。最初っから」
「え?」
「あー、そりゃ大昔?お前がまだちっちゃかった頃は子どもだって思ってたよ、そりゃあ。
けど、久しぶりに会ったら雰囲気はえらい変わってるし、こっちも大変だったっての」
「本当……?」
「さっきのじゃ、証明にならない?」
「っ……」
「まあ、まさか葵からキスされるなんて思ってなかったけどね」
「う……そ、それは」

思い出しただけで、顔から火が出そう。しかも結局、カカシ先生は私のことを、その……そういう目で見てくれていたわけで。早とちりした。

「まああれが初めてのキスじゃなかったんだけどね」
「……え、どういう意味!?」
「はは、秘密」
「何でー!
……!」

また唇を塞がれた。今度は心なしかさっきよりも熱いキス。角度を変えて何度も口付けられる。

「ん、ぅ……」

体に力が入らなくなって、必死にしがみついた。するとカカシ先生は目を丸くする。

「まさか今ので腰抜けちゃった?」
「……馬鹿!」
「はいはい。……じゃ、帰るよ」

手を差し伸べられる。私は迷わずその手を取った。

「えへ……先生大好き」
「!(まったく、こいつは……)
俺もだーよ」

二人仲良く手を繋いで歩く。
帰ろう、私たちの家へ。

結局慰霊碑に刻まれていた名前の事を聞くタイミングを失った。

(それに……いつキスした、のかも)

だけど、今は。今だけは、他の事を何も考えたくない。

(幸せ)

胸がきゅん、と疼く。こんなに幸せで、良いのかな。
この時未来の事は何も知らず、私はただ幸せだったのだ。



20111016


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