04
「もしかして……いつも遅刻するのって」
「……」
その無言を私は肯定と受け取った。
やだな、私ったらずっと寝坊での遅刻だなんて決めつけて……。先生には先生の人生があって、いっぱい悩む事も考えることもたくさんあって。いくら強くたって、先生だって人の子。
私なんかが、……先生と知り合ってちょっとしか時間も経ってなくて、何も知らない私が。
好きでいて良い相手じゃ、ない。
「さっきは、すみませんでした」
「!」
顔が見えないのが、幸いかもしれない。
「軽い気持ちであんなことしたりして。分かってる、先生は……『先生』だもん。馬鹿みたいだ、私っ……」
元々許される想いじゃない。頭ではちゃんと分かってる。なのに……なんで、なんでこんなにも心が苦しいんだろう。どうしてこんなに、惹かれているんだろう。
「こんなの、初めてだからっ……こんな気持ち初めてだからどうしたらいいのか分かんないよ……」
イタチのことが大好きっていう、あの気持ちとは全然違う。
何が違うのかよく分からない、けど、芯が違う。
ただ分かるのは、
「好きになったりして、……ごめんなさい」
どうしようどうしよう
好き、好き好き好き好き
でも行き場がないんだよ、この気持ち
本当はぶつけることすら許されないんじゃないかな
「好きって、伝えて……ごめんなさい」
「葵」
「な、………!!!」
唇に、柔らかい感触。
さっきとは違う。もっともっと温かくて。
思わず瞳を見開く。
だって、目の前には目を閉じたカカシ先生の、口布のない素顔があったから――――――
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