03

解放、されて

良いの?


「自由に、お前の望む道で生きろ。葵らしく。
……もう、振り返るな」
「……!!う、わぁぁあ……!……ひっくっ、う……」

その言葉に、ついに声を上げて泣いてしまった。
今の口振りからすると、カカシ先生は、実は全て知っているのかもしれないと思った。だけどそんなの今は関係なくて。

「いい、のかな……」
「うん」

「(ごめんなさい、ごめんなさい……イタチ、ごめんなさい)」

ねぇイタチ、今の今までずっと、あなたに会うために強くなろうと思ってたんだよ。
ずっと、迎えに来てくれるまで待つって、そう決めてた。

だけど、その考えは今からさよならするね。

カカシ先生に言われて私、目が覚めた。イタチのために強くなるとか言って、結局は後ろを振り返ってばかりだったんだ。
これからは、前だけを向いて歩いていきたい。
……だから。

「ごめっ…ひく、ごめんなさ……ごめんなさい……うっ……!!」

どこにいるのかも分からないイタチに向かって、ひたすら謝罪の言葉を繰り返す。
最も、イタチこそ迎えに来る気持ちなんてさらさらなかったかもしれないんだけど……どっちでも良い。もう、振り返っちゃ駄目だ。


なんだろう、
胸の辺りがとても軽くなった気がする。


「……すー…………」
「泣き疲れて寝たか……?」

薄く紅潮した頬を流れた涙を指で拭う。

「やっぱり、そうだったんだな」

初めて葵の家に入った日の夜。葵が寝言で漏らした名前は聞き間違いではなかったのだろう。

「行かな、で……イタチ……」

(ずっと抱えていたんだな)

その時、自分の中で全てが繋がってしまった。彼女の過去、サスケとの繋がり。それしかヒントはなかったが、この勘は大当たりだったらしい。とは言え、詳しい事情は分からないのだが、大方予想はつく気がした。

「ま、……良かったな。葵。これでお前は本当に、強くなれるよ」

そっと頬を撫でる。そして、ゆっくりと顔を近づけ、桃色の柔らかい彼女の唇に静かに自分のそれを押しあてた。


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