05

「何だァ?」

イナリ君が、泣いてる。そしてナルトをじっと睨みつけていた。

「なんでそんなになるまで必死に頑張るんだよ!!修業なんかしたってガトーの手下には敵いっこないんだよ!いくらカッコイイこと言って努力したって本当に強いヤツの前じゃ弱いヤツはやられちゃうんだ!」

「!」

イナリ君のその姿に、思わずその場に居た全員が言葉を失う。

「うるせーなァ。お前とは違うんだってばよ」

「お前みてるとムカツクんだ!」

この国のこと何も知らないくせにでしゃばりやがって!お前にボクの何がわかるんだ!つらいことなんか何も知らないでいつも楽しそうにヘラヘラやってるお前とは違うんだよォ!」

ナルトがピクリと反応する。

「……だから……悲劇の主人公気取ってビービー泣いてりゃいいってか……」

(!ナルト……)

「お前みたいなバカはずっと泣いてろ!泣き虫ヤローが!!」
「ナルト!あんたちょっと言い過ぎよっ「イナリくん」
「!」

突然口を開いた私に、サクラが驚いて口を閉じる。

「言い方は悪かったかもしれないけど……さっきのあれ、間違ってもないよ」
「え……葵?」

私もそのまま部屋を出た。



「ま!ナルトの奴も悪気があって言ったわけじゃないんだ……あいつは不器用だからなぁ」
「……」
「お父さんの話はタズナさんから聞いたよ。
ナルトの奴も君と同じで子どもの頃から父親がいない。これは、葵にも同じことが言えるんだけどね」
「!」
「……というより両親を知らないんだ。……それに奴らには友達もほとんどいなかった。ホント言うと君より辛い過去を持ってる」
「えっ?」

「けど!辛いといじけたりすねたりして泣いてるところは一度も見たことがない。ナルトはいつも、誰かに認めてもらいたくて一生懸命で……その夢のためだったらいつだって命がけなんだ。
葵だってそうさ……大人びた性格してるから、普段あんまり見せないけど、影でずっと努力してる。自分の目的のためにね。

あいつらはもう、泣き飽きてるんだろうなあ。

だから……強いって言う事の本当の意味を知ってる。君の父さんと同じようにね。

……あの二人は君の気持ちを一番分かってるのかもしれないなぁ」
「えっ?」
「あいつらどうやら……君のことが放っておけないみたいだから」
「……」


暗い空を見上げる。
あいつらが抱えているもの、それは――



20110806


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